My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
「ああいうの、なんだか素敵だね」
無事に花瓶を購入して、雑貨屋を後にしながらつい笑みが零れる。
思い出すのは、さっきの雑貨屋の夫婦。
あれこそ典型的な、奥さんに尻に敷かれたかかあ天下な家庭なんだろうな。
「なんか凄く"家族"って感じがして。ああいう夫婦の間で生まれた子は幸せだろうなぁ…」
きっと愛情込めて育てて貰えるんだろうな。
夫婦なんてものをよくは知らないけど、なんとなくそんな気がする。
「…お前、ああいう男がいいのかよ」
「え?」
ぽつりと漏れた神田の言葉に、視線を上げる。
購入した大きな花瓶の包みを片手に、目線はこちらに向いてない。
ああいうって…あの店主さん?
「悪くはないと思うな。奥さん一筋みたいだったし」
言えば、神田の眉間に皺が寄った。
何故。そして怖いから止めて下さいその顔。
「でもあの人の話を聞かないところは、ちょっと直して欲しいかな」
苦笑混じりに付け足せば、ようやく神田の目がこちらに向いた。
ちらりと見て、どこか考えるように口を噤んで。
「…カードを贈るってのは、そんなに大事なことなのか」
不意にそんなことを問いかけてきた。
「カード? ああ、うん。この国では主流だから。想いを言葉に乗せて贈ること。匿名で言葉を綴って贈るのも、割と定番だった気がする。だからあのカード達も匿名だったんだよ」
神田のファンクラブの方々のカードもね。
定番だと思えば受け入れられるんじゃないかな。
そう希望を持って言えば、神田の視線はまた不意にどことなく宙へと向いた。
「…そうか」
ぽつりと応える言葉は否定じゃない。
おお…もしかしてこれは。
「花束をくれた人達のこと、少しは考えてくれた?」
「…その行動力は、認めてやる」
笑顔で問いかけてみれば、なんとも神田らしい言葉が返ってきた。
素直じゃないけど、普段の神田を知っているからこれはちゃんとした褒め言葉だ。
少しはあの贈り物のこと考えてくれたみたい。