My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「こう…体、密着させたり、とか…」
ぽそぽそと、更にか細い声で月城が辿々しく問いかけてくる。
髪の隙間から覗く耳は赤いまま。
「だとしたら…あの、あんまりしない方がいいかも…」
…なんでだよ。
「…誤解する人もいると思うから」
……。
…確かに月城の言うことは一理ある。
だからこそ無駄に優しさなんか振り撒こうとは思わない。
愛だの恋だの、そんなもんに興味はないが、俺も男だからそういう身体的な"欲"が全くない訳じゃない。
ただ、そういうもんを向ける相手が今までいなかっただけで。
「…別に、誰にでもしねぇよ」
興味ない奴に好意なんて向けられても、どうとも思わない。
馬鹿兎じゃねぇんだ。
女の好みなんてねぇし、どんなに外見が良くても中身のない奴には惹かれたりしない。
花束の件だってそうだ。
その行動力は認めるが、だからって嬉しさを感じた訳じゃない。
俺が嬉しいと思えるのは、どんなに金がかかったもんよりこいつが"思い"を込めたもん一つ。
それだけでいい。
「俺が世話焼くタイプに見えるか」
「…見えない」
「じゃあ気付けよ」
俺が見てる相手は、お前だってこと。
…というか何度も言ってんだろコラ。
「何度も説明なんかしねぇぞ」
生憎、そんな生易しい性格じゃない。
「…そっか」
果たして理解できたのか。
小さな声でこいつが打った相槌はそれだけ。
そして微かに凭れるかのように、密着した胸に僅かに背中を預けてくる。
そんな些細な行為に、ドクリと胸が鳴る。
「…お前こそ、簡単に誰かの前で無防備になるなよ」
「え?」
「そういう姿は、俺の前だけにしろ」
「そういうって…」
ぎこちなく首を僅かに捻って、月城の目が俺を映す。
すぐ傍にある顔は吐息さえも感じられそうな程。
見えた顔は僅かに赤く、濡れた髪は頬に張り付いていて、ぽたりと雫が瞬きした睫毛の端から零れ落ちる。
そんな一瞬の姿さえ目に止まる程、月城の纏う雰囲気はいつもと違って見えた。
…そういう姿だ、阿呆。