My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
「そういうふうに見ていてくれる人がいるのって、あんまり悪い気しないでしょ?」
笑って問えば、真一文字に結ばれた唇はそのまま。神田は考えるように黙り込んだ。
「…別に」
やがて返されたのは、神田らしい淡白なもの。
「望むものだけ俺に向いていれば、それでいい」
それは確かに神田らしい考え方だった。
そういえば、あの教団の通気口の中でも似たようなことを言ってたっけ。
譲れないものなんて、一つあればいいって。
…神田が譲れないものってなんだろう。
「…でも花に罪はないでしょ」
気になったけど、問いかけられなかった。
何よりも神田が譲れないものなら、きっととても大事なことなんだろう。
それは簡単に教えてくれなさそうな気がしたから。
「ったく」
私を見ていた神田が不意に、深く溜息をつく。
「花の茎まで食糧にする奴には何言っても無駄だな」
「馬鹿にしてる?」
「感心してんだよ。俺には到底思い付かない思考だ」
それ、感心というより呆れが入ってるんじゃ…。
「さっさと行ってさっさと帰るからな」
「あ、うん」
あまりにも自然にさらりと出た承諾に、一瞬反応が遅れてしまった。
すたすたと横を通り過ぎる神田を慌てて追う。
「ありがとう」
「なんでお前が礼言うんだよ」
「だって嬉しかったから」
神田にとって、譲れないもの以外は興味ないんだろうけど。
こうして付き合ってくれるくらいには私のことも譲歩してくれてるんだろうと思うと、純粋に嬉しかったから。