My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
「結構な量の花束だったからなぁ…あれが入る花瓶って、割と大きくなきゃ駄目だよね」
「…おい」
「まぁでも探せばすぐ見つかるでしょ」
「おい」
「何?」
先を歩いていると、後ろから低い声が何度も呼び止める。
振り返れば思いっきり顔を顰めた神田が立っていた。
「なんでわざわざ、んなもん買いに行かなきゃなんねぇんだよ」
理由は一つ。
神田が花瓶なんて持ってるはずもなく、教団にもあんな大量の花を活けられる花瓶はなく。なら買いに行くまでと、朝食後に街に連れ出して今に至る。
「いいでしょ、非番なんだし。花も生き物なんだから、早く水に浸けてあげないと」
勿論、神田は嫌がったけど。
いつも何かあればお構いなしに私の体を引き摺っていく神田だから、今日は思い切って私が引き摺ってみた。
体格差があるから、正確には引き摺るというより引っ張る形になったんだけど。それでも腕を引けば渋々とついて来てくれた。
嫌な顔はするけど、最近なんだかんだ付き合ってくれること多いんだよね。
「早く買えたら午前中のうちに教団に帰れるよ」
ぐっと拳を握って見せれば、神田は呆れた顔をするだけ。
「なんでお前が他人のことにそこまでやるんだよ。関係ねぇだろ」
「それは、そうだけど」
自分と重ねてしまったから、なんて言えない。
ここまでプレゼントを迷惑そうにあしらう神田を見てしまったら、もうベルギーで買ったチョコなんてあげられない。
仕方ないから、後で自分で食べようかな…。
「どんな形であれ思いが詰まったものだから。その"思い"をあんまり邪険にしたら駄目だよ」
気持ちに応える気はなくても、受け取るくらい。
「人に嫌われるのは簡単だけどさ。人に好かれるのは大変なんだよ」
誰にでも好かれたらいいなんて言わない。
でもそうやって誰かに好かれることは、嫌われることよりずっといい。
例えアイドル的扱いだとしても、神田のことを好いてくれてる人達がいるのは純粋に嬉しいと思う。
神田の過去を知ってから、なんだかそういう気持ちが私の中で強くなった気がする。
一人で立って生きてる神田だから。
そんな神田を見ていてくれる人達がいるのは、きっといいことなんじゃないかな。