My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「っくしゅんッ」
ザーザーと降り続く雨の中を走って、見つけた小さな橋の下に慌てて逃げ込んだ。
「うわ…びしょびしょ…」
髪も服もすっかりびしょびしょで、思わずぶるりと体が震える。
2月だから、雨なんて降ればまだまだ寒い。
「どうしよ…神田、何処に行っちゃったのかな…」
橋の下から外を覗いてみても、歩いているのは傘を差してる人達だけだから顔なんて確認できない。
あの長身に美形顔だから、普段なら目立つんだけど…今のこの状況じゃ見つけるのも難しいかも…。
「通信ゴーレムも持ってないし…」
連絡の取りようもない。
…本当、どうしよう。
「…とりあえず、雨が止むのを待つしかないかな…」
こんな急に降り出したなら、またぱったり止んでくれるかもしれない。
服にしみ込んだ雨水を絞り出しながら、とりあえずその場で待機することにした。
足元は濡れてなかったから、草の生えたその場に座り込む。
「ぅぅ…寒い…」
ぎゅっと膝を抱いてみても中々温まらない。
こんなに濡れちゃってたら、仕方ないとは思うけど──
「?」
座り込むと違和感があった。
それが何か考える前に、はっとする。
「あっ」
慌ててポケットの中で主張していたそれを、取り出す。
「うわ…びちょびちょ…」
見れば、案の定。すっかり雨に濡れた体は、そのポケットの中身まで濡らしてしまっていた。
ベルギーで、リナリーとミランダさんと一緒に買ったチョコレート。
『そんなものでいいの?』
『うん。ビターだし、いいでしょ』
『そうだけど…もっと良いチョコにしたらどうかしら』
『神田は元々チョコに興味ないだろうし。これくらいが丁度いいよ』
あまりにも二人に笑顔で催促されたから、その場凌ぎの為に選んだのはプレゼントするには、あまりに貧相なチョコだった。
透明な袋に入った、たった数粒のビターチョコ。
多分簡単な味見用くらいで販売されてたものじゃないのかな。
元々あげるつもりはあんまりなくて。
朝、あの大量の花束を見て溜息をつく神田を見て、その思いは確信に変わった。
あげても多分、食べてくれなさそうだし。
それなら自分で食すに限る。