My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
ティエドール元帥に、神田に認めて貰ってるって言葉を貰った時も嬉しかったけど。
それ以上にじんわりと私の心を満たす何か。
「?…おい、何突っ立ってんだよ」
思わず足を止めてしまった私に、先を数歩進んだ所で止まった神田が振り返る。
怪訝に声をかけてくるその姿に、どうしようもなく口元が緩みそうになった。
「…うん」
小走りに駆け寄って、その隣に立つ。
「私、神田に近付けてるかな」
ファインダーとして、しっかり神田をサポートできるくらい。
「何言ってんだよ」
見上げた顔は息をついたかと思うと、花瓶を抱えていない手が私に伸びる。
「いるだろ、隣に」
さらりと、その指の甲が私の髪を微かに撫でた。
…それ、私が問いかけた意味と少し違う気がするけど…うん。
「…そっか」
まぁ、いいや。
なんかまた顔が熱くなりそうだから、下手に突っ込むのは止めておこう。
簡単に手を伸ばせば触れられる距離にある、神田の体。
見えない心の距離は、どこまで近付けたのかわからないけど。
……今ならきっと、私もその手を伸ばせば触れられる気がする。
──ポツ、
「ん?」
不意に鼻の頭に冷たい何かが降ってきた。
見上げると、あんなに快晴だったのにそこにはいつの間にか、どんよりとした雨雲が。
うわ、嫌な予感。
ポツ…ポツ…
「わっ…降ってきた…!」
「まじかよ…」
同じく空を見上げた神田が、顔を顰める。
「ったく。走るぞ」
「うんっ」
小降りだけど、同じく雨を感じた周りの人込みが一斉に動き出す。
やがて小降りだった雨も、どんどん強さを増していく。
「わ…ッ」
視界が悪くなるにつれて、周りの人込みも窮屈になる。
皆走り出すから、あちこち体がぶつかってしまう。
「月城ッ」
「っ神田…っ?」
名前を呼ばれた気がして、辺りを見渡す。
ザーザーと降り出す視界の悪い雨の中、その高い身長は見当たらなかった。
「…え、嘘」
……まさか逸れちゃった?