My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
ノアのことを結局神田には伝えられなかった。
伝えたいと思ったのに、臆病な心が邪魔をした。
神田の言葉にきっと偽りはない。
あの時の神田は、本当に私を心配してくれていた。
一人でなんでも抱えようとするなって、きつい時は頼れって、そう言ってくれた。
…もしかしたら神田だけに伝えることならできるかもしれない。
教団には言えなくても、神田だけに今の不安を全て吐き出して、それでも私を受け入れてくれたら。
でもそれは一番したら駄目なことだ。
神田が受け入れてくれたとしても、それでもし教団に私のことがバレてしまったら。同じ秘密を知っていた神田も処罰の対象になってしまう。
最悪、教団に神田も敵だと確定されてしまったら。
それだけは駄目。
教団に造られた神田の生きる場所は、きっと此処だけだから。
その唯一の場所を私が奪ったら駄目だ。
解決策なんて何も見えないけれど、こうして変わらず皆と一緒にご飯を食べていたいから…なんとかしなきゃ。
「…あれ? そういえばリンクさんは?」
「ああはい、リンクなら──」
「ウォーカーッ!! 急にいなくなるのはやめなさい!」
ふといつもアレンの隣にいた、規律に厳しいリンクさんがいないことに気付く。
するとタイミングを見計らったかのように、アレンの言葉を遮る鋭い罵声が飛んできた。
見れば額にくっきり青筋立てて、乱れた息で足早に向かってくるリンクさんが。
うわ…あれずっと捜してたんだろうな、アレンのこと。
「急になんて、ちゃんと言いましたよ。ティムを捜してくるって」
「あれはただの言い逃げです! 捜すなら私も一緒に……何してるんですか」
呆れ半分、怒り半分。そんな顔で咎めるリンクさんの目が、私達を見て止まる。
ティムキャンピーはアレンの隣でがつがつとみたらし団子に噛り付いているし、捜す目的は既に終わっている。
リンクさんの驚き様は…うん。多分ラビと一緒だ。