My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
照れ臭さからゴシゴシと慌てて口元を拭っていると、なんだか周囲から視線を感じ──…うわ。
周りの女性陣の視線が凄いんですけど…!
なんか頬染めてるんですけど…!
その目は間違いなく、この目の前に座る神田に向けられていた。
…流石。
もうアイドルって認めます。
「…神田って、狡い」
「あ? 何がだよ」
思わず漏れた言葉は、私の本音。
普段は美形という仮面を被った暴君なのに、そういう暴君キャラとは違うようなことをするから。
私の心を簡単に揺さぶっていく。
乱暴な癖に、優しくて。
冷たい癖に、こうして付き合ってくれて。
……そういえば最近、頭を叩かれることも減った。
「何が狡いんだよ」
「…なんでもない」
頭を掴まれたりすることは、相変わらず多いけど。
「またそうやって言葉呑み込みやがって」
「これはそういうのと違うから」
言うのが、なんか癪だから。
相変わらず叩く時は叩くし。
DVされてるのに褒めるなんて、可笑しいでしょ。
…まぁDVというより…神田のコミュニケーションの一つなんだろうけど。
…………と、最近は自分に思い込ませるようにしました。
「じゃあなんなんだよ」
「だから、なんでもないって…神田、しつこい」
いつも、退く時はあっさり退くのに。
机越しに顔を寄せてくる神田に、距離を取るように逆に顔を退く。
「お前が変な顔して言うからだろ」
変な顔?
…どんな顔してたんだろう。
「…神田に比べたら、変じゃないと思う」
「……どういう意味だコラ」
だってあんな、"世話が焼ける"みたいな笑顔。
仕方ないなって、そんなふうに優しく笑う顔。
今までの神田なら絶対見せてくれなかったのに。
どんな顔してたかわからないけど、絶対さっきのあの笑顔より珍しくはないと思う。
「…うん。そっちの方が神田らしいね」
「は?」
私の言葉に眉間に皺寄せる神田は、いつもの見慣れた表情。
思わずほっとして笑みが漏れれば、神田は怪訝な顔をした。
いつもの神田は見慣れているから安心する。
…でも、ああいう笑顔も…素敵だな、とは思うけど。
…恥ずかしいから言わない。