My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
……なんだろう。
こんなふうに私のことを聞かれたことなんて、今までなかった気がする。
「……」
今までなら、そういうこと聞かれたら当たり障りなく応えてスルーしてきたけど…。
…神田になら、不思議と聞かれて嫌な気にはならなかった。
寧ろそれだけ私に関心を持ってくれているのかな、と思うと………嬉しいのかも。
「…茎以外にも、色々食糧にできるんだよ。どんぐりとか菜の花とか、茸なんかも探して食べたことある」
「野生児かよ」
まじまじとツッコんでくる神田の言葉に、思わず笑いが零れた。
「私のうち、ご飯があまり沢山食べられなかったから。自分で食料調達みたいな、そんな感じかな」
包み隠さず全部は簡単に吐露できないけど、神田は周りに言いふらすような人じゃないから。
不思議と言葉は口から出てきた。
「…ふぅん」
小さな声で相槌を打つ神田は、また何か思うような顔をしていて、それ以上問いかけてくることはなかった。
「……」
沈黙ができる。
でもその空気は決して悪くない。
こんなふうに、神田と一緒にいて楽に思えるようになるなんて。去年のバレンタインは思いもしなかったな。
「…ゆっくり食えよ。時間はある」
「え?…うん、」
何気なく漏れた神田の声は、どことなく優しい。
待たせてるから急いで食べなきゃ、とは思ってたけど。
その言葉に急いで咀嚼していた口の力を緩める。
…そういえば似たようなこと、ジジさんにも昔言われた。
似たようなことだけど…神田のその言葉の響きは、ジジさんとは違って聞こえた。
「月城、」
不意に名前を呼ばれる。
何かと思って、お皿から顔を上げれば。
「何?」
頬杖ついたまま、片手をこちらに伸ばす神田が見えた。
不思議に思って問いかける間に、その手が触れたのは私の口元。
「ソース、付いてる」
その指が、優しい動作で口元を拭う。
拭き取りながら、神田はくすりと微かに口元に笑みを浮かべた。
…うわ。
「ぁ…ありがとう…」
顔が熱くなって、思わず俯く。
最近、何度か見せてくれる神田の優しい笑み。
未だにそれは見慣れなくて、つい照れてしまう。