My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
陽も落ちゆく夕方。
窓から差し込む茜色の光が、足元の影をより長くする。
そんな時間帯に自然と皆の足が向かう場所は、教団内で一番賑やかな所──食堂。
「…なんの罰ゲームなんさ、それ」
ぽかんと口を開けて、料理の乗ったトレイを手に見てきたのはラビだ。
あ、今日の夕食はハンバーグだね。
濃いデミグラスソースの波に乗るひき肉の照り焼き具合が美味しそう。
「罰ゲーム?」
「仕方なくです…」
「…つき合ってやってんだ」
開いた口が塞がらない状態のラビに、食事をしていた手を止めて首を捻ってみる。
そうすればラビの目が訴えるように私の両隣を見た。
私の両隣の席には、なんだか不服そうに応えるアレンと神田がいる。
ちなみに私の今夜のメニューは、ジェリーさんに頼んで作って貰った冷たいお蕎麦。
デザートはみたらし団子。
どうせなら二人が好きなものを食べてみようと思い、頼んでみた結果だ。
一見合わなさそうに見えて、なんだかしっくりくる。
どっちもアジアの小さな島国由来の料理だからかなぁ。
「ただ普通に三人でご飯食べてるだけだよ」
「ただ普通に食べられない二人がいるから驚いてるんさ」
そうかな。
捻った首をそのままに左右を見れば、二人も頼んだ夕食を黙々と口にしていた。
「大人しく食べてるよ、二人共」
「まじか…雪、どんなマジック使ったんさ」
「大袈裟だな。特に何もしてないよ」
強いて言うなら禁止ルールを決めただけ。
大人しくそれに従ってくれているから、二人の間に衝突が起きていないだけ。
なんだ、やればできるんだから二人共。
普段もこうしていればいいのに。
あまりに喧嘩するから、つい場を治める為に夕食に強制参加させてしまったけど意外にも二人は従ってくれた。
普通なら一緒に並ばない二人が左右にいるから、つい嬉しくなって頬が緩む。
「なに笑ってんだよ」
「美味しいものを食べると、笑顔になるんです」
同じく蕎麦を食しながら呟く神田に、笑って返す。
これは本当のことだから。
すると見返す神田は不機嫌そうにはしていたものの、それ以上突っ込んでこなかった。