My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「いただきます」
適当に頼んだ料理を前に、早速とフォークを伸ばす。
イギリスの定番料理の一つ、ジャケットポテトの欠片を口に入れて──……うん。
なんていうか……
「不味い」
はっきりとその言葉を口にしたのは、目の前で眉間に皺寄せた神田だった。
あ、あんまり大きな声で言ったら駄目だからね…っ
「まぁ…ジェリーさんの料理が美味し過ぎるから…」
「ここが不味過ぎんだよ。よくこんなもんで満足できるな」
「しーッ神田静かにっ」
周りに聞こえるからっ
フォークを皿に置いて手を離す神田は、完全に食べることを放棄したらしい。
確かにイギリスは他国に比べて、料理の味は不評なことあるけど…全部が全部、美味しくない訳じゃない。
偶々ここが悪かっただけだと思う。
まぁでも、私は食べられなくもないけど。
「食べないなら、私貰っていい?」
「これ全部食うつもりかよ」
「うん。折角作って貰ったんだし。勿体無い」
多少味が悪いくらい、どうってことない。
小母さんから貰ってた料理で、そういうのは慣れてる。
美味しく味わえるのかと言われれば頷けないけど。
当たり前に頷けば、神田は物珍しそうにしげしげと私を見た。
「前から思ってたが…お前のそういうところ、モヤシに似てんな」
「流石にあんなに食べないよ。私は食に拘りないだけ」
「……花の茎まで食う奴だからな」
「そのネタ引っ張り過ぎだから」
神田の頼んだお皿も引き寄せて、目の前の料理を食す。
机に頬杖つきながら、こちらを見る神田は何か思いに耽るような姿。
「そこまで腹空かせてたのか」
「…うーん…まぁ、そうかもね」
何気なく問われた内容に、思わず苦笑する。
サラダを食べる手は止めずに、視線はお皿に向けたまま。
「ジジが鼠みたいに食う奴だって言ってただろ」
「鼠って」
まぁハムスターもその一種だけど。
「そうやって食う奴にしては、お前ひょろ過ぎんだろ」
「…そうかな」
それなりに鍛えてはいるんだけどね。
…というか。
ちらりと視線を上げる。
頬杖ついたまま、神田の目は真っ直ぐ私に向けられていた。