My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
素直じゃないけど、ちゃんとした褒め言葉。
少しはあの贈り物のこと考えてくれたみたい。
でも…あれ。
神田が周りの人達に関心を少しでも持ってくれるのは、嬉しいことなのに。
……なんだか少しだけ、胸がきゅっと切なくなった。
「……」
なんでだろう。
「あ、ねぇ神田」
「?」
その切なさを無視するように、視界に入った看板に目を止める。
声をかければ、神田も足を止めてそれを見た。
神田と街に出掛ける。
そんなこと任務以外では一緒にしたことなかったからか、なんとなくまだ教団には戻りたくなかった。
太陽はもう高い位置にある。
丁度お腹も空いてきたし。
「どうせだから、お昼食べて行こうよ」
看板を掲げた飲食店を指差せば、神田は一瞬渋る素振りを見せて。
「…わかった」
こくりと頷いてくれた。
「──わぁ、バレンタインメニューが沢山」
店内に入ってメニュー表を覗けば、バレンタイン色に染まってる料理の数々に思わず笑いが零れた。
「どんだけ浮足立ってんだよ…そんなに大事なもんなのか」
呆れた顔でメニュー表から周りに視線を移す神田に習って、同じく周りを見渡す。
…うん。
お昼時だから人が多いのは頷けるけど。
その大半が男女ペア。
夫婦や恋人同士らしく、仲睦まじく食事していた。
「夫婦や恋人には大事なイベントだよ」
こうして二人でペア席に座ってる私達も、そんなふうに見えるのかな…。
……。
いや、ないない。
「……」
何気なく浮かんだ自分の思考に予想外にも照れがきて、メニュー表で口元を隠しながら神田を盗み見る。
興味なさそうに周りを見渡す顔は、いつもの神田と変わらない。
だけどいつもの暗い内装の教団じゃなく、明るく賑やかな店内で向かいに座ってるのがなんだか新鮮で、その横顔もいつもと違って見えた。
「…なんだよ」
周りを見渡してた黒い目が、不意にこちらに向く。
視線は感じていたらしい、そんな神田と目が合って思わずドキリとした。
「う、ううん。神田はメニュー決まった?」
「…蕎麦はねぇのか、此処」
「……流石にないかな、うん」
でもやっぱり神田は神田でした。