My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「家庭は女が強い方が円満になるって言うしな。しっかり尻に敷いてやんなよ!」
「いたっ」
朗らかに笑いながら、ばしんっと背中を叩かれる。
この店主さん、豪快というか人の話を聞かないというか…良い人そうなんだけども。
というか家庭って。
そんな仲じゃないから!
「だから違──」
「兄ちゃん、ちゃんと花にカードは添えたかい? 愛の綴ったカードがなきゃ意味はねぇからな」
「あ?」
「だから違いますって!」
ぽんっと神田の肩に手を置いてしみじみと助言する店主さんに、慌てて声を張り上げる。
余計なこと言わないで下さい、なんか恥ずかしいから!
「まーたッ! あんた、何客に余計な口出ししてんだいッ!」
「いててッ!」
そこに大きな声が響いたかと思うと、店主さんの耳を強く引っ張る中年の女性が現れた。
同じ雑貨屋のエプロンをしてるから、多分…
「悪いねぇ、うちの旦那が余計なことを。気にしないでおくれよ」
「…いえ」
やっぱり。
どうやらこの店主さんの奥さんらしい。
「わかった、わかった! 俺が悪かったから!」
「全く、いつまで経ってもその絡み癖直りゃしないんだから。余所のカップルに助言する程、あんたは偉いのかい」
いや、だからカップル違いますって。
「余所にあれこれ言う暇があるなら、私へのプレゼントもちゃんとして欲しいもんだね」
「勿論、ちゃんと用意してるさ! 俺はお前しか見えてないよ」
おお…言い切ったなぁ、店主さん。
そっぽを向く奥さんに、必死で弁解しながら言う店主さんの言葉に偽りは見えない。
イギリスの男性って、基本は紳士だって言うし。
あのイギリス出身のアレンが良い見本。
きっと本当に、ちゃんとしたプレゼントを用意してるんだろうな。
「面倒臭い夫婦だな…」
「うん、ご馳走様です」
隣で溜息をつく神田に苦笑しながら、思わず合掌。
この国でも今日という日は、恋人や夫婦の間で特別な日なんだろうな。