第23章 2/14Valentine's Day(番外編)

「うーん…これで大丈夫かなぁ…」

「どれでもいいだろ…どんだけ悩むんだよ…」

「だって花束がちゃんと全部、入らなかったら困るでしょ」


　適当に近くの雑貨屋に来て数十分。
　幾つもの花瓶を前にして、私は悩んでいた。

　あまりに神田が乗り気じゃなさ過ぎるから、私が真面目に選ばないと。
　ちゃんとあの花束全部活けられなかったら、買っても意味がない。


「はい、これ持ってて」

「これで三つ目だぞ」

「うん。それも保留ね」


　呆れた顔して後ろに立つ神田に、持っていた花瓶を手渡す。
　保留で選んだ三つの花瓶を抱えて、神田は面倒臭そうに溜息をついた。


「あっちのデザインも良さそうだし。あれも見てみよう」

「…デザインなんてどれも同じだろ」

「全然違うよ。デザインで雰囲気も変わってくるんだからね」


　こうして買い物をすると、意外に楽しくて。
　あちこち見ながら吟味する私に、面倒臭そうにしながらも神田は後ろをついて歩いていた。


「はっはっは！　いいねぇ」


　そこに朗らかな笑い声が聞こえてきて、顔が上がる。
　見えたのはこの雑貨屋のエプロンを付けた男性。
　此処の店主さんかな…？


「一緒に買い物たぁ、仲の良いことで。お嬢さん、どんな花瓶を探してるんだい？」

「あ…はい。できるだけ沢山、花が活けられるのがいいんですけど…」

「成程。その花は彼氏からの贈り物かな？」


　店主さんの目が神田に向く。
　おお、神田がちゃんと男性として見られてる。
　こんな美形だから、女性に間違われることも偶に……って違う。


「いやいや。そんなんじゃないです」

「こんな男前捕まえるとは、やるなぁ」


　って話聞いて下さい。
　彼氏違うから。


「ただ花を活ける花瓶を、買いに来ただけです」

「わざわざこんな日にかい？　今日はバレンタインデーだよ。お嬢さん」


　まぁ…そうだけど。

　教団本部がある、此処はイギリス。
　そういえばここのバレンタインは、花束を贈るのは主流だったような気がする。
　贈るのも男性からが定番だったような…。

　こうして知ると、国によってバレンタインは様々だから面白いなぁ。