My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
「そういうふうに見ていてくれる人がいるのって、あんまり悪い気しないでしょ?」
「……」
笑って問えば、神田は考えるように黙り込んだ。
「…別に」
やがて漏らした言葉は、神田らしい淡白なもの。
「望むものだけ、俺に向いてりゃそれでいい」
それは確かに神田らしい考え方だった。
そういえば、あの通気口の中でも似たようなこと言ってたっけ。
『譲れないもんなんて、一つあればいい』
…神田が譲れないものって、なんなんだろう。
「…でも花に罪はないでしょ」
気になったけど、問いかけられなかった。
何よりも神田が譲れないものなら、きっととても大事なことなんだろう。
それは簡単に教えてくれなさそうな気がしたから。
「…ったく、」
私を見ていた神田が深く溜息をつく。
「花の茎まで食糧にする奴には、何言っても無駄だな」
「…馬鹿にしてる?」
「感心してんだよ。俺には到底思い付かない思考だ」
それ、感心というより呆れが入ってるんじゃ…
「さっさと行ってさっさと帰るからな」
「え?……あ、うん」
さらりと出たその承諾の言葉に、一瞬反応が遅れてしまった。
スタスタと横を通り過ぎる神田に、慌てて後を追う。
「ありがとう」
「…なんでお前が礼言うんだよ」
「だって、嬉しかったから」
神田にとって、譲れないもの以外は興味ないんだろうけど。
こうして付き合ってくれるくらいには、譲歩してくれてるんだろうと思うと。
純粋に、嬉しかった。