My important place【D.Gray-man】
第22章 ティータイム後のあなたと
「そうやって見てやってんだ。お前もちゃんと見せてろ」
「ちゃんとって…」
「どうせまたルベリエとあんなことあっても、何も言わねぇだろ。お前」
疑問じゃなく確定で言えば、月城の表情は固まった。
やっぱ図星だな。
ったく、怪我だけじゃなくこういうとこでも我慢すんなよ。
まぁ…多分、今までそうやって生きてきたからなんだろうが。
「お前はよくても俺はよくねぇんだよ」
頬に添えた親指で、目元をなぞる。
コムイの実験室で、歯を食い縛ってガキみたいな顔をしていた月城だ。
何かに抗おうとするかのように、でもどこか縋るような、そんな泣き出しそうな顔で。
あの顔を思い出すと、胸の奥を鷲掴みにされたような感覚になる。
「…俺の知らないところで、あんな顔するな」
ルベリエの前で、暗く歪んだ顔をして怯えていた。
あの姿を思い出すと、その鷲掴みされた胸の奥が鈍く縮む。
俺自身の手で怯えさせることさえ躊躇したのに、俺の知らない所で他の誰かがそんなことをこいつにしたのかと思うと…きっとまたあの、黒い感情が俺の中で頭を擡げる。
「一人でなんでも抱えようとすんな」
一人で立とうとするのは別にいい。
自分の力で生きようとしている姿を、否定なんかしない。
「きつい時くらい頼れ」
だからってきつい時まで無理して、一人で立とうとするんじゃねぇよ。
「……っ」
月城の目が丸くなる。
俺を見上げて、驚いた顔をして。
その顔が、くしゃりと歪んだ。
見覚えがある。
コムイの実験室で見た、泣き出しそうな一歩手前の顔。
月城の手が、頬に添えていた俺の手の上に重なる。
唇を噛み締めて、泣き出しそうな顔を歪めて、俺の手を縋るように握る小さな手。
そんな月城の姿に胸が騒いだ。
理由はわからない。
ただどことなくその感情は、不安に似ていた。