My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine's Day(番外編)
そしてきたる、2月14日。
黒の教団では行事なんてあってないようなもの。
バレンタインであっても普通の日となんら変わらず、いつも通り。
恋人同士なら何かするにしても、此処は国籍なんて皆バラバラだから。
祝い方も様々、チョコをあげるなんて中々誰もしないと思う。
──そう、この人に対しても。
「…神田」
「あ?」
「何、それ」
「……部屋の前にあった」
この日は運よく、私も神田も非番だった。
何気なく食堂で見かけたから、声をかければ返事一つで了承してくれて、その目の前の席に座ったんだけど……何それ。
何その大量の花束やカード。
「…それ、もしかしてバレンタインのプレゼント?」
「ばれんたいん?」
どう見たって、そのイベントのプレゼントにしか見えない。
思わず問えば、神田の口から漏れたのはぎこちない単語の響き。
え、バレンタイン知らないの。
「まさかとは思うけど…バレンタインを知らないとか…」
「んなもん興味ない」
まじですか。
流石年越しイベントでさえ無関心だった人。
全く知らない訳じゃないんだろうけど、全く気にかけてないんだろうな。
「大体なんで、こんなもん押し付けられんだよ」
「そういうイベントだからだよ。大切な人や想い人に、プレゼントを贈って気持ちを伝えるっていう──…あ。」
成程。
多分このプレゼント、神田のファンクラブの方々からじゃないのかな。
「気持ちを伝えるなら、なんで名乗らねぇんだよ。訳わかんねぇ」
頬杖つきながら溜息混じりに、神田がぼやく。
その目は興味なさそうに、机に置かれた大量の花束に向けられていた。
綺麗にラッピングされた花束を一つ、手に取ってみる。
一緒に添えられたメッセージカードには、匿名で熱い想いが綴られていた。
…成程。
神田のファンクラブの存在は知ってるけど、その方々と直接話したことはない。
だから断言はできないけど…こんな暴君のファンになるくらい、女神様みたいな優しき心の持ち主だろうから。無闇に想いを押し付けたりは、しないようにしてるんじゃないかな。
それ故の匿名希望。
……もう本当にどこのアイドルのファンクラブですかこれ。