My important place【D.Gray-man】
第22章 ティータイム後のあなたと
以前の俺なら、これ以上突っ込まなかった。
月城の言う通りだと思えたからだ。
「立場がどうでもよかったら、それでいいのかよ」
なのに俺の口から出たもんは、納得したはずの内心とは相反するものだった。
「なんでそうやって甘んじて受け止められんだ」
ルベリエから逃げてきた癖に、リナは平気なフリをして笑っていた。
そんなリナを見て強い奴だと思った。弱音を吐かず一人で立とうとする。
そういう奴は嫌いじゃない。
だから俺も無駄に突っ込むことはせずに、あいつの好きに傍にいさせた。
今の月城もそれと同じだ。
顔を暗く歪ませるくらい心を荒される何かを言われたんだろうが、そういう姿を見せずに一人で立とうとしている。
元々、月城はそういう奴だってことも俺は知っていたはずだ。
だから何度も任務を組まされても、二度と組みたくないとまでは邪険に思わなかった。
なのに何故か、今はそんな月城の姿に無性に苛立った。
「何か言われたんだろ。無神経に心荒らされて、それでいいのかよ」
リナ相手ならこんなこと言わない。
月城にだって以前ならこんなこと絶対に口にしなかった。
わざわざ隠してる心を引き出すような、そんな面倒なことしたいなんて思わない。
なのに、あの暗く歪んだ顔を見てしまったからか。
そんな月城が心のどこかで引っ掛かる。
なんでそうやっていつも一人で立とうとするんだよ。
泣いてる癖に泣いてないと否定した、幼いガキみたいな顔持ってる癖に。
「…別にいいよ。それでも」
吐き捨てるように口にした俺の言葉に、目を丸くしていたかと思えば。月城は感情を荒げることなく、静かに視線を逸らした。
「私はしがないただのファインダーだし。それ以上でも以下でもないから」
その言葉は正論だ。
こいつの価値はルベリエにはそんなもんだろう。
「中央庁にも教団にも何も求めてないよ」
きっとその言葉も本音なんだろう。
初めて出会った時からそうだった。
何かにこいつが執着しているところは見たことがない。
AKUMAの銃弾を受けた時だって苦しそうに笑ってた奴だ。
その生にさえも執着なんて見せていなかった。
そんな月城だから──不安になる。