My important place【D.Gray-man】
第22章 ティータイム後のあなたと
「ルベリエなんかの目に止まるようなこと、するんじゃねぇよ」
昔、ルベリエが教団に訪れる度に俺の元に逃げてきたリナを思い出す。
平気なフリをしていたが、その目は不安げに揺れていた。
今でもルベリエと会話するだけで、リナの体は震えを覚える。
それだけリナの中にトラウマとして植え付けられた、ルベリエの存在は重い。
そんなリナと同じようなことを、ルベリエが月城にもし植え付けたとしたら。
そんな予感だけで、胸の奥でまた黒い感情が渦巻いた。
「下手に目でも付けられたらどうする」
悠長に礼なんて言ってる場合かよ。
もっと危機感ってもんを持て。
「…大丈夫だよ」
そんな俺を余所に、月城はまたもや悠長なことをほざきやがった。
…お前な。
「あの人は私なんか見てない。教団で働いてるただの一職員としか、見てないから」
つい呆れ混じりに言い返そうかと思った口が、止まる。
「だから大丈夫だよ。少し意地悪したかったんじゃないかな? ルベリエ長官、多分Sっ気強そうだし」
苦笑混じりの月城の言葉は、確かに俺も感じていたことだった。
ただのファインダーである月城に、ルベリエが興味を持つはずはない。
ファインダーとしては男共の中で引けを取らずに仕事をこなしてる奴だが、月城は別に特異な戦闘力を持ってる訳じゃない。
極々普通の、何処にでもいるファインダーの一人だ。
だから月城の意見は一理ある。
何を言われたかは知らないが、あの場で出くわして気紛れにルベリエに嫌味を言われただけかもしれない。