My important place【D.Gray-man】
第22章 ティータイム後のあなたと
特に目的地も決めずに、ただルベリエから離れたい一心で歩き続けて、やがて辿り付いたのは建物の間に設置された小さな中庭。
青々と茂った木々が整列するその間で、ようやく足を止める。
ここまで離れれば、ルベリエ警護の中央庁の奴らなんかも現れないだろ。
「何やってんだ」
掴んでいた手を離して振り返る。
再度確認すれば、俺を見上げる月城の顔はもう歪んではいなかった。
「神田の方こそ、なんであそこに?」
「質問してんのはこっちだ。なんであの部屋でルベリエなんかといた」
モヤシの体に寄生したノアメモリーを利用価値があるからと、教団に置く決断をしたのはあのルベリエだ。
そんなエクソシストを道具としてしか見ないあいつが、ただのファインダーである月城を目に止めるはずがない。
なのになんでクロス・マリアンの事件部屋で一緒にいたのか。
「…ティムと約束したから」
「約束ってなんだよ」
問えば、どこか言い難そうに月城は肩に乗っているティムキャンピーのことを口にした。
「ティムが時々クロス元帥のことを恋しがって、あの部屋に行くから。その時は私もつき合うって、約束したの」
成程な…風呂場で別れる前に示唆していた、ティムと交わした秘密ってのはそれか。
「…それをモヤシは知ってんのか」
小さく頷く月城に、眉間に力が入る。
「ったく…なに約束させてんだ、あいつは」
未だに立入禁止の事件部屋に、易々と向かわせるなんて。ルベリエに目を付けられてもおかしくないだろうが。
「っ違うよ。アレンは関係ない。私が勝手にティムと約束しただけだから」
溜息をつけば、即座に強く月城が首を横に振る。
一瞬モヤシを庇ってるかと思ったが、よく考えればあの似非紳士野郎のことだ。そんな事件関係者と疑われそうな可能性のあることを、黙って見過ごすとは思えない。
月城の頭の怪我も必死に心配してた奴だ。モヤシなら止めるだろうな。
「だから、その…ありがとう」
…だからってなんでそこで、礼が出てくるんだよ。