My important place【D.Gray-man】
第22章 ティータイム後のあなたと
「一緒にお茶をしていただけですよ。どうかね? 君も」
「遠慮する」
誰がこんな奴と茶なんて飲むか。
即答で断って背を向ければ、背中に隠していた月城と目が合う。
その時初めてまともに見た月城の顔は、暗く歪んでいた。
不安げに揺れる目に、固く噛み締めるように結ばれた唇。
見覚えのあるそれは、以前俺の自室で怯える姿を見せた時と同じだった。
十中八九ルベリエに何か言われたんだろう。
リナの時といい、人の心を踏み躙るのが得意な奴だ。
そう悟れば、胸の奥に黒い何かが渦巻く。
「行くぞ」
「あ…っ」
「彼女は私と話していたのですがね」
ルベリエの傍にこいつは置けておけない。
腕を引いて歩き出せば、再び白々しい声が後ろから届いた。
何ほざいてやがる。
「そうは見えなかったがな」
何かしら責めてたんだろうが、こいつの顔を歪ませるくらいには。
胸の奥で、黒く渦巻く思いが頭を擡(もた)げる。
一度頭を上げた重いこの感情を放っておくと、下手にルベリエに手を出し兼ねない気がして足早にその場を去った。
「…神田」
腕を引かれて、小走りについてくる月城が俺を呼ぶ。
黒く渦巻く感情を抱えたままその声に応えることはできなくて、振り返らずに無言で歩き続ける。
そんな俺に月城は嫌がることなく、大人しく歩調を合わせて歩き続けていた。