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My important place【D.Gray-man】

第4章 溝(どぶ)に捨てたもの



 人がほとんどいない夜の街中。
 その中でそいつを見つけるのは簡単だった。

 というか。


「何してんだ、お前」

「……え」


 人気のない列車のホーム入口。
 其処に座り込んでいる姿は、どう見ても野宿する気満々の姿。

 まさかとは思ったが、本当に野宿する気だったのか。こいつ。


「神田…っ? なんっ…笑いに来たんですか!」

「阿呆か」


 勢いよく立ち上がったかと思えば、脇の怪我が痛んだのか顔を歪めて後退る。
 逃げんなコラ。


「いや、もう充分辱め受けましたから! これ以上恥ずかしい思いさせないで!」

「安心しろ。お前が阿呆なことくらい、とっくに知ってる」


 逃げ出そうとするマントの襟首を掴んで阻止する。
 暴れんな、面倒臭ぇんだよ。


「じゃあなんで…っ足手纏いは、置いてくんじゃなかったの」

「自分の始末は自分でするんじゃなかったのかよ」


 問われたことを同じに返す。
 どうせ教会から逃げてから、金が足りないことにでも気付いたんだろ。

 任務先の、此処はミュンヘン。
 教団までは、列車で帰るにしても結構な距離がある。
 所持金だけじゃ到底帰り着けない。


「するよ、始末。電車賃なんて、日雇いバイトでもして稼げば…」

「本気で言ってんのか」

「で、できないことは、ないと思う…」


 一体何日バイトするつもりなんだよ。
 それがわかってるのか、言い難そうに月城が視線を逸らす。


 ──ポタ、


 口篭(くちごも)る月城の額を伝う新血。
 それが頬を伝って、暗い地面に落ちる。
 乾いた布で拭きでもしたのか、額の出血はこびり付くように、顔を所々覆っていた。

 …面倒臭ぇな。


「そんな顔で彷徨いてみろ。それこそ墓地の殺人鬼と間違われるぞ」

「え?…ぐぇッ神…っな…!」


 襟首を掴んだまま、ずるずると引き摺り進む。
 蛙の声みたいな悲鳴が聞こえたが、この際無視だ。

 とにかく、こいつを放り込む為の宿探しが先だな。











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