My important place【D.Gray-man】
第4章 溝(どぶ)に捨てたもの
✣
「それでは、エクソシスト様はこちらへ」
司祭に案内されて、方舟ゲートへの扉が開く。
淡い光に照らされた、薄い板のような方舟の入口。
そこを通れば、すぐに教団本部内へと辿り着く。
「エクソシスト様?」
ヘマをしたのはあいつだ。
自分の責任は自分で取る奴だってことは知ってる。
ガキじゃないから、此処から一人で帰ることだってできる。
それでも俺の足はゲート内へと進まなかった。
「チッ」
教会の窓から見える空は暗闇だった。
こんな時間帯なら列車も動いていないし、馬車だって捕まえられない。
となると辿る道は一つ。
…あいつ気付いてんのか。
「何処へ…っ」
「本部には連絡を入れる。気にするな」
ゲートに背を向けて、外の扉に向かう。
追いかけてくる司祭の声には、必要最低限にだけ告げて返した。
教会を出ると、人影のない街並みの間を吹く夜風は少しだけ冷たい。
「…面倒臭ぇ奴」
人影がほとんどない街頭。
出ていったあいつの姿は見当たらない。
宿屋か、列車のホームか。向かいそうな場所を頭の中で巡らせて、足を踏み出す。
本当に、面倒臭い。