My important place【D.Gray-man】
第22章 金烏.
「テメェのゴーレムの面倒くらい、テメェで見ろよ。他人に押し付けんじゃねぇ」
「押し付けてません。ちゃんと面倒見ますよ、ティムも雪さんも」
「誰が月城の面倒も見ていいっつった」
「神田よりはマシでしょ。すぐ頭叩くような人、女性に触る資格ありません」
「んだとテメ」
「はいストップ!!!」
拳でも突き出してやろうかと思った瞬間、それを遮ったのは月城のはっきりとした声だった。
「もう、本当に喧嘩し過ぎだから! はい、手っ」
「あ?」
「え?」
盛大に溜息をついた月城が、急に俺とモヤシの手をそれぞれ握ってくる。
なんだよ急に。
「なんか喧嘩の発端に、私関与してること多いから。責任持って、私が二人の面倒見ます」
「面倒って…」
「何言ってやがる」
「ということで、今から夕飯食べに行こうっ」
は?
「ほら、もう夕方だし」
俺とモヤシの手を交互に握ったまま、傾く太陽を見上げて月城が歩き出す。
動揺しながらもついていくモヤシの隣で、つい足を止めそうになったが。
「美味しいもの食べると、自然と笑顔になるんだよ」
振り返った顔が、ふわりと笑う。
その顔を見ると何故か、強く引き止められなかった。
「それにルベリエ長官にも、夕飯は用事入ってますって言ったから。付き合ってくれなきゃ困るの」
「用事って…どんな会話したんですか」
「そうだねー…ケーキの話とか。長官、最近マカロンを使ったケーキ作るのがマイブームなんだって。プロ級の腕前だったよ」
「あいつのケーキ食ったのかよ」
「うん、美味しかった」
先を歩く月城の歩幅に合わせて、仕方なく進む。
言葉を返すその雰囲気は明るい。
あの不安定に見えた心は落ち着いたのか、気にはなったがモヤシがいる手前、聞けなかった。
モヤシの肩に乗っていたティムは、いつの間にか月城の頭の上に移動していて、我が物顔で寛ぎながら金色の尾を揺らしている。
…表情なんてないが、そう見えたんだよ。
さっきまで凹んでた癖に、何嬉しそうにしてんだあのゴーレム。