• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第22章 金烏.



 ファインダーはこの教団の中で、一番死亡率が高い職。
 弱い奴は簡単にぱたぱたと死んでいく。

 いつかそうやって誰かに縋ることもなく、こいつも呆気なく逝ってしまうんじゃないか。
 そうやって一人背を向けたまま、俺の前からも呆気なく姿を消してしまうんじゃないか。


 ……そうか。
 こいつに俺は、不安を感じていたのか。

 だからリナの時みたいに、見て見ぬフリはできなかった。
 …俺の傍に、繋ぎ止めておきたいと思うから。


「お前──」

「神田が、」


 一人で解決しようとする月城に口を挟もうとすれば、その上に言葉を被せて遮られた。
 俯いて、握った拳を胸に当てて。





「…神田が、見ていてくれたら…それでいい」





 その口から小さな声で漏れたのは、俺を求めるものだった。


「……」


 予想外の言葉に、思わず思考が一瞬止まる。
 目の前で俯いたまま、拳を握って微動だにしない月城。
 その縮こまるような姿は、初めて俺のことが知りたいと、あの通気口の中で必死に言葉を紡いでいた姿と重なった。

 ………というか、お前な。


「……本気で言ってんのか、それ」

「…うん、」


 ゆっくりと、恐る恐る月城の顔が上がる。
 俺の表情を伺うかのようなその顔に、思わず呆れた。


「馬鹿じゃねぇの」

「え。」

「お前、俺の何を見てんだよ」

「え…ご、ごめん?」

「疑問形で言うくらいなら謝んな」

「わっ」


 慌てて謝ろうと下げる頭を掴んで、それを止める。
 意味もなく謝んじゃねぇよ。


「んなもんとっくに見てんだろうが。忘れたのかよ。月城雪って奴以外、見る気はねぇって言ったろ」


 ゾンビ事件の最中に、初めて俺に自分の親のことを月城が話した時。
 確かにはっきりとそう口にすれば、月城は泣きそうな顔ではにかんだ。

 あの顔は今でも、俺の脳裏に焼き付いたまま残ってる。

 あそこまではっきり言ったのに、なんで今更見て欲しいだなんて言葉が出てくるんだ。
 阿呆か、お前。

 見てんだよ、とっくに。
 じゃなきゃわざわざ、ルベリエの所から引き摺ってこねぇよ。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp