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My important place【D.Gray-man】

第21章 地獄のティータイム



「だから、その…ありがとう」


 とにかく、お礼は言わないと。
 頭を下げて伝えれば、また一つ溜息の気配が届く。


「ルベリエなんかの目に止まるようなこと、するんじゃねぇよ。下手に目でも付けられたらどうする」

「…大丈夫だよ」


 そうだね、と。次から気をつけるから、と。そう言えばいいだけなのに。
 私の口から出たものは、無意識の中の別のものだった。


「あの人は私なんか見てない。教団で働いてるただの一職員としか、見ていないから」


 あの目を見た瞬間それがわかった。
 一瞬だったけれど、その一瞬で充分だった。

 私はきっと教団で働く駒の一つ。

 エクソシストでさえも聖戦の為の"人柱"としか思っていない、中央庁だからこそ。
 そんな目で見る人からすれば、私は教団という枠組みの中のただの小さな歯車の一つに過ぎない。

 それが嫌だった訳じゃない。
 ただ結局私はそれだけの存在なんだと、そう改めて思わされた気がして、少し愕然としただけだ。


「だから大丈夫だよ。少し意地悪したかったんじゃないかな? ルベリエ長官、多分Sっ気強そうだし」


 空気を和らげる意味で、苦笑混じりに返してみる。
 だけど何故だか、神田の眉間の皺は更に深く刻まれた。


「立場がどうでもよかったら、それでいいのかよ」


 吐き捨てるように口にするその様は、暴言を吐く時の神田と同じ。


「なんでそうやって甘んじて受け止められんだ」


 投げ付けるように鋭い言葉を吐く。
 でもその言葉の棘は、一つも私に向いていなかった。


「何か言われたんだろ。無神経に心荒らされて、それでいいのかよ」


 神田の気配がしたのは、背後から腕を廊下に引かれた直後だった。
 多分神田は私と長官の会話なんて聞いていない。
 私を見つけてすぐ、ああやって庇ってくれたんだろう。

 それでもはっきり「何か言われた」と断言する神田は…多分、私の顔を見て悟ったのかな。
 あの時の私、情けない顔してたから。

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