My important place【D.Gray-man】
第21章 地獄のティータイム
再び足早で歩き出す体に、慌てて後を追う。
ちらりと振り返ると、開いたドアの前で両手を後ろに組み、姿勢正しく立っているルベリエ長官の姿が見えた。
何も言わずにこちらを見ている鋭い目と重なる。
「っ」
射貫くような細く鋭い眼孔は、神田ではなく私に向けられていた。
さっきまで浮かんでいた貼り付けたような笑顔も無く。
反射的にぞくりと背中が粟立って、逃げるように視線を逸らした。
「…神田」
すたすたと一定の速度で歩き続ける足を追う。
呼びかけても、神田は応えない。
早い歩幅は緩むことなく、私の腕を引いて歩き続けた。
その手を振り払うことはできなくて、大人しく小走りについて歩く。
ティムも私の肩に乗ったまま、大人しく身を寄せ続けていてくれた。
有無を言わさない力なのに、私の腕を掴む神田の手はそこまで強くない。
じんわりと衣服の上から感じる、大きな手の感触。
…あ、また、だ。
別に体温が伝わって感じる訳でもないのに。
神田に触れられると、じんわりと広がる温かい"何か"に長官への恐怖が薄れていく。
ただ腕を引かれているだけなのに。
不思議とほっとする自分が、そこにいた。