My important place【D.Gray-man】
第21章 玉兎.
「…あの、今は仕事中でしょうし…お風呂は後でもいいんじゃないですか…?」
恐る恐る、リーバーさんを庇う意味でバロウズさんに声をかける。
ただでさえ忙しい職場なのに、こんなことでリーバーさんを振り回すのは可哀想な気がしたから。
「君は? 見たところ、同じ科学班の者ではなさそうだが…」
「あ、はい。探索班をやってます、月城雪といいます。はじめまして」
じろりとバロウズさんの目が向いて、思わず冷や汗が流れそうになる。
なんとか頭を下げて名乗れば、不意にずいとその顔が近付いた。
な、何…っ
「…臭い。君も臭うぞ、月城雪とやら。教団本部の人間は、どこも風呂に入らないのか」
「なっ…」
くんくんと匂いを嗅がれたかと思えば、ずばりそんなことを言われた。
お風呂ならちゃんと入ってますけど!
「さっきまで機械整備してたので、オイルの臭いが染み付いてるのかも…」
「君も風呂に入れ、即刻!」
「す、すみませんっ」
「はいはい、わかりましたから。月城は科学班とは関係ないでしょう、責めないでやって下さい」
フォローするつもりが逆に駄目出しされて、圧される私を庇ってくれたのはリーバーさんだった。
助けるつもりが、逆に助けられてしまうなんて。
「ほら、書類サインしたから。これでいいか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
逃げ道を与えるつもりで、リーバーさんも書類をくれたんだろうけど。
「もう一度、コーヒーお願いできますか。できれば僕のデスクで」
「えっと…は、はい」
リナリーの肩に手を置いて、にこにことデスクに誘うペックさん。
「だから、色目使うなって言ってるでしょう…!」
それを見て頭を抱えるリーバーさん。
こんな場面を見てしまったら、見て見ぬフリなんてできない。
リーバーさんも基本、リナリーにとって面倒見の良いお兄さんみたいなポジションだからな…。
大変だと思う。