My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
内心ほっとしつつ窓際を見れば、本当にじーっとこっちを見てくるティムがいた。
あれ、本当に映像記録されてないかな…ジジさんとかジョニーに解析で見られたら、変にからかわれそうなんだけど…。
「ティム、そろそろいいだろ? 帰るぞ」
アレンが声をかければ、今度はパタパタと羽音を立ててティムは大人しく肩に乗った。
「一緒に待っていてくれたんだ。雪さんにお礼」
アレンに言われて、ティムが私の頬に長い尾を擦り寄せてくる。
ひょろ長い尾は細いけれど、先端はふわふわとした綿菓子みたいな形になっている。
見た目通り感触もふわふわで、思わず頬が緩んでしまう。
目も耳も鼻もないゴーレムなのに、本当に可愛いなぁ。
「これくらい、いつでも付き合えるからね。今度また此処に来たくなったら、私の所においで」
「ガアッ」
頬が緩むままに笑いかければ、ティムはギザギザの歯を見せて応えてくれた。
うん、そのチャームポイントの一つであるお口も可愛い。
「駄目ですよ。そんなこと言うと、本当に雪さんの所に行っちゃいますから。ティムが迷惑をかけます」
「それくらい平気だよ」
「でも…」
「ガァアッ」
「ティムもそんな我儘言うんじゃないっ」
「前から思ってたけど、アレンってよくティムの言いたいことわかるよね…私、全然わかりません」
「慣れですよ、慣れ」
深夜にしては明るい空気で部屋を出る。
此処に来た時は暗かったアレンのあの表情は、自然と消えていた。
「今からまた書庫室で、調べものを続けるんですか?」
「アレンは?」
「僕はもう寝ようかと。リンクが起きたら困るし…なんだか凪さんと話したら、スッキリしたから」
「そう?」
そう笑うアレンは、本当にどこかスッキリとした表情をしていた。
何がアレンにとってよかったのかわからないけど、その表情にはほっとした。
「雪さんも、そろそろ寝ませんか? ずっと調べていたみたいだし。資料片付けるの手伝いますから」
「うーん…そうだね。じゃあお言葉に甘えようかな」
問題は解決してないけれど、これ以上アレンに心配をかけたくない。
私も誰かに見つかる前に、あの資料は片付けてしまおうかな。