My important place【D.Gray-man】
第21章 玉兎.
思わずリナリーと、その冷ややかな声の主に目を向ける。
「科学班班長がエクソシストに給仕させるなんて、おかしいでしょ」
其処に腕組みして立っていたのは、眼鏡をかけた白衣姿の男性だった。
よく知らない顔だけど…確かこの人も、フェイさんと同じで新しく中央庁から来た増員組の人だったような…。
「いや。これは、その…」
「僕間違ってるかな?」
「…いいえ」
名前は──…そうだ、レゴリー・ペック。
この科学班で第二班の班長をしている人だ。
疲れた顔で対応するリーバーさんに、冷ややかに容赦なく突っ込む姿は、あまり印象良くは見えない。
リナリーが科学班で給仕をしているのは、もうずっと前からのこと。
それにリーバーさんが無理にやらせてる訳じゃない。
「こ、これは私の趣味でやってるんですっ」
「趣味?」
「はいっ」
そこに慌ててリナリー自身がフォローを入れる。
うん、やっぱり良い子だなぁ。
「ふぅーん」
そんなリナリーをじろじろと、頭から爪先まで見るペックさんは……なんだろう。
なんか、いやらしい目つき。
「じゃあ僕にも淹れて下さいますか? リナリー・リー」
「え? あっ、はい!」
「……リーバーさん、これって…」
「…ああ。巻き毛が知ったら怒るだろうな…」
やっぱり。
ペックさんに催促されて、慌ててコーヒーを淹れるリナリー。
そんな二人を後ろから見ながら、思わずリーバーさんにこそこそと声をかければ、同じことを思ってたらしい。
うん、リナリー程の美少女なら納得できる。
一瞬でペックさんをも魅了しちゃったんだろうな。
…室長のリナリーを心配する気持ちも、わかるかも。
これじゃ常に傍で見ていたくもなる。
「趣味なら仕方ないかなぁ」
「…ペック班長、リナリーを色目で見ない方がいいですよ」
「なんで? 恋人いるの?」
「兄がいます」
うん。何よりも怖いお兄さんがね。
でもそんなリーバーさんの忠告も虚しく。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
コーヒーの入ったマグカップを差し出すリナリーに、マグカップではなくリナリーの手を握るペックさん。
ああ、駄目だ。
まるでリーバーさんの忠告が届いてない。