My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「アレンがそうじゃなくても、私にはそうなの」
つい数十分前にアレンが言ってくれたことと同じ言葉を返す。
すると銀灰色の目はまた、丸くなって。
「雪さんは…不思議な人ですね」
ふ、と笑みを零した。
どこか照れ臭そうに、でも柔らかな笑みで。
わぁ…こんなふうにも笑えるんだなぁ。
やっぱり可愛いな、アレンって。
と、いうか。
「私、間違っても不思議ちゃんキャラじゃないと思いたいです…」
「ああ、いえ。そういうことじゃなくて。僕の予想と反することを言うというか」
慌ててぱたぱたと振られるアレンの手が、私の手に触れる。
やんわりと優しい動作で握られた。
「雪さんの言葉は、直接的であってもなくても、偽りなく真っ直ぐ届くから。なんだか安心するんです」
両手で包むように手を握られて、そんなふうに愛おしそうに誰かに握られたことなんてないから。
思わず変な汗を掻きそうになる。
は、恥ずかしいんだけど…。
「上手な言葉を並べたりしないから、響くのかな」
「…私、言葉にするの下手だから」
「そこが雪さんの良いところなんでしょうね」
「そんなこと言ったの、アレンが初めてだよ」
「本当ですか?」
頷けば、何故か嬉しそうにアレンは笑った。
「じゃあそんな雪さんの魅力に気付けたのは、僕が最初ってことですね」
「魅力って。そんな大袈裟な」
「大袈裟じゃないですよ。本心ですから」
ああ、駄目だ。
こういうところ、神田とは正反対なアレンだから。
暴言を吐かれるのは慣れていても、こういう優しい褒め言葉は慣れていない。
握られた手が変な汗を掻く。
「あ、の…アレン…手、離してくれると、あり難いんだけど…」
変な汗がアレンに伝わる前に、離したい。
辿々しくなってしまったけどどうにか伝えれば、きょとりとした顔でアレンは私と握ってる手を交互に見た。
え何。