My important place【D.Gray-man】
第21章 玉兎.
「あ、此処だ」
それから仕事に戻った私は、やがてすぐに科学班の研究室へと辿り着いた。
旧本部よりも広くなったこの研究室内も、他支部や中央庁からの増員で人が増えた。
一班しかなかった科学班も、今では複数班に分かれている程。
それぞれにリーダーである班長がいて、リーバーさんは第一班の班長を務めていた。
「すみません、失礼しま──…あ。」
ぺこりと頭を下げながら研究室に踏み込んで、一人目立つ人物を見つけた。
白い白衣だらけの人達の中で、その人だけは真っ黒な団服を着ていたから。
エクソシストだけが着ることを許された、ローズクロスを掲げた真っ黒な服を。
「リーバー班長。コーヒーどうぞ」
「ああ、ありがとう。リナリー」
其処にいたのは、給仕セットを引いてコーヒーを淹れているリナリーだった。
さっき室長が長期の任務帰りって言ってたけど…その後すぐに、此処に給仕しに来たのかな。
任務で疲れているはずなのに、そんな雰囲気を全く見せない笑顔で周りにコーヒーを配っている。
なんて仕事熱心…じゃない、なんて良い子なんだろう。
「ん? 月城じゃないか。どうした、科学班に用事か?」
リナリーに貰ったコーヒーに口を付けながら、すぐにリーバーさんの目は私を捉えた。
研究室の人は皆白衣姿だから、そうじゃない人はきっと目立つんだろうな。
「はい。提出書類があって、リーバーさんのサインを頂きたいんです。今、大丈夫ですか?」
「ああ、見せてみろ」
「あれ? 今日は教団内で仕事なのね、雪。お疲れ様」
リーバーさんに書類を手渡しながら、傍に立つリナリーを見る。
「リナリーもね。任務帰りなんでしょ? 疲れは? 大丈夫?」
「うん、比較的楽な任務だったから」
そう笑うリナリーは、見た目にはどこにも外傷はない。
となると本当に楽な任務だったのかな。
よかった。
「時間があるなら、雪もコーヒー飲んでいく?」
「じゃあ、貰おうかな」
リナリーの淹れてくれるコーヒーは美味しい。
折角だし頂こうかな。
そう思って、笑顔でリナリーに頷いた時。
「おかしいんじゃないかな」
突如その場に、冷ややかな声が響いた。