My important place【D.Gray-man】
第21章 玉兎.
「お仕事をされてる"フリ"はおやめ下さい。ファインダー関連の書類は、今日の業務内容に入っていません」
あっさりとそんなコムイ室長の演技を見破った高い声が、凛と響く。
細い通路の出口を塞ぐように立っていたのは、スタイルの良いボディラインを持った、鋭い目をした女性。
大量のAKUMAに旧本部を襲撃されて大幅に団員が減った教団は、何処も人手が足りていない状態だったから。
新本部に引越した際にその人数増員の為、中央庁や他支部から新しい人材が次々導入された。
この女性も、その一人。
「フ…フェイくん…」
「司令室にお戻りを」
確か元中央庁事務官のこの人は、ブリジット・フェイさん。
今はこの教団のコムイ室長の補佐役をしている。
兼、室長の見張り役。
「仕事から逃げ出すなど、言語道断。時間を21分も無駄使いしてしまいました。早くお戻りを」
「えぇえ~…ちょっとリナリーに会い行っ」
「お・も・ど・り・を」
「………ハイ」
うわぁ…凄い。
流石元中央庁の方。
醸し出す雰囲気というかオーラというか、言葉の端々までまるで一部の隙もない。
そしてどう聞いたってフェイさんが正論。
こればっかりは、同情しても止める訳にはいかず。
「…どんまい、です。室長」
「ぅぅ…リナリー…」
めそめそと泣きながらフェイさんに引き摺られていく室長を、見送ることしかできなかった。
ごめんなさい。