My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
イノセンスある所に怪奇現象有り。
だからこそ掘り起こせば悲しい末路に辿り着くこともある。
それでも経験者である私の中でも特殊な任務内容だったし、だからこそその一連の出来事はアレンの心を抉った。
『辛いなら人形を止めてこい。あれはもう"ララ"じゃないんだろ』
『二人の約束なんですよ…人形(ララ)を壊すのはグゾルさんじゃないと駄目なんです』
『甘いな、お前は』
真っ青な空が夕日へと染まり、夜に変わりゆく。
風の少し強い湿った空気の中、「エクソシストは救済者ではなく破壊者だ」と告げた神田に、アレンは目に浮かぶ雫を拭いながら静かに言った。
「それでも誰かを救える破壊者になりたい」と。
どちらの意見が正しいなんて、そんなことは思わない。
アレンにはアレンの神田には神田の、それぞれの思いがあってエクソシストとして戦っているだろうから。
ただ、"誰か"なんてそんな曖昧な存在に涙を流せるアレンを、綺麗事だなんて思えなかった。
本当に、綺麗な涙だと思った。
「私じゃそんなふうにできないから。だからアレンは凄いと思う」
私はきっとそんなこと口にできない。
だからこそアレンの凄さがわかる。
伯爵の手下だと周りが敵視するAKUMAさえも救うべき存在だと、例え周りに批難されても戦っているアレンは本当に凄い。
凄くて、だから心配になる。
人は少数派の存在を遠ざけたり非難したりもする生き物だから。
純粋なその綺麗さは、時としてアレンを孤立させてしまうかもしれない。
「だからもし何かあれば、まずはアレン自身の言葉を聞きたいなって思うの」
「…そんな、ことで…僕が信頼できるなんて…」
「そんなことじゃないよ。私には充分、大きいことだから」
何より出会ってこんな短期間で、ここまで心許せたエクソシストはアレンが初めてだったから。
色々お世話をしてくれたクロス元帥にだって、真意みたいなものは吐き出せなかったし。
だからそれだけで充分なんだよ、アレン。
…恥ずかしいから言わないけどね。