My important place【D.Gray-man】
第21章 玉兎.
「雪くん、なんだか少し雰囲気が変わったね」
「雰囲気、ですか?」
屈んでいた腰を上げれば、同じにコムイ室長も立ち上がる。
「うん。以前より柔らかくなったというか…前の雪くんなら"仕事して下さい"の一言で、ばっさりだったしねー」
そうだったっけ…。
まぁ、仕事はして欲しいんだけど。
「そういえば変わったのは雪くんだけじゃなかったかな」
ふと何か思い出したように、室長の口元が緩む。
私だけじゃない?
誰のこと言ってるんだろう。
「憶えてるかな。前に雪くんが、僕に初めて意見した時のこと」
意見した?
…ああ、検査入院する前に司令室で任務報告した時のこと。
初めて私が意見してくれたって、あの時の室長嬉しそうに言ってたっけ。
「あれから神田くんには聞けたのかな。あの体のこと」
「…はい、まぁ…一応」
「本当かい?」
「全部じゃないですけど…教えてくれたので。一応、大まかなことは理解してるつもりです」
「…そっか。よかった」
こんな所で神田の体の詳細なんて話せないから、掻い摘んで応えれば、それでも嬉しそうに室長は顔を綻ばせた。
「やっぱり」
…やっぱり?
「やっぱりって…?」
「ああ、いや。"やっぱり"、君達は相性がいいなって思ってね」
「…相性ですか」
そういえば。
神田と何度も任務を組まされる理由を聞いた時も、そんなことを言ってたような──
カツン、
不意に聞こえたのは、ヒールの足音。
「見つけましたわ、室長」
不意に聞こえたのは、高い女性の声。
あ。
この声って──
「っ! いやー、ふんふん! なるほど、この書類だね! ウン!」
「わっ? ちょ、室長何急に…っ!」
体をギシリと硬直させたかと思えば、いきなり私の肩を抱く室長。
そのまま持っていた書類の入ったファイルを取られて、早口で意味不明なことを捲くし立てられた。
え、何。急になんですか。
それリーバーさんに、サイン貰わなきゃいけない書類なんですけど。