• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第21章 玉兎.



「それがね! 聞いてくれるかな!」

「えー…」

「今日、リナリーが一週間の長期任務からやっと帰ってきたんだけど…!」

「私、聞くって言ってませんけど」


 冷静に突っ込んでみても、私の言葉なんてまるで無視。
 熱く語るコムイ室長の言葉は全て、リナリーへの愛が溢れていた。

 要点をまとめれば、長期任務から帰ってきた大好きな妹と久々に一緒の時間を過ごしたいのに、最低限の任務報告しか会話ができなかったとかなんとか。
 だから山積みの仕事から抜け出して、リナリーに会いに…ってやっぱり抜け出したんですね、仕事。
 追われてるんですね、室長。


「それは仕方ないですよ。日頃から仕事サボって溜めてる室長が悪──」

「少しくらい、いいじゃないか…大事な妹との時間を過ごしたいって思ったって、いいじゃないか…ッ」

「いや…ちょ…室長、こんな所で落ち込まないで…っ」


 面倒だから!

 ずーん、と見るからに纏う空気を凹ませて地面に膝を抱いて座り込み、めそめそと泣き出す室長には流石に焦った。
 これじゃ私が泣かせてるみたいだから!


「もう。ほら泣かないっ」


 細い通路の奥で座り込んで泣く室長を前にどうしようもなく、同じように屈んで持っていたハンカチをその顔に差し出す。


「そんなに会いたいなら止めませんから。でもそんな顔で会いに行ったら、リナリーも驚きますよ」

「…雪くん…」


 室長の妹思いな性格は、充分知ってる。
 それを理由に仕事を怠けるのは感心しないけど、それだけリナリーのことを大切に思っている証でもあるから。
 そう考えると羨ましくも思える。
 それだけ、室長のリナリーに向ける愛は純粋で大きなもの。


「室長が譲れないものですもんね。その気持ちは、大切にすべきだと思うから」


 受け取ったハンカチを目元に当てていた室長は、眼鏡の奥の切れ目をぱちりと瞬いた。


「…ありがとう」

「いえいえ。ハンカチはあげますから、ちゃんと拭いて行くんですよ」


 笑いかければ、やっと室長もその口元に同じく笑みを浮かべてくれた。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp