My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「もし僕が、周りが噂するような…本当にノアの手先だったりしたら、雪さんはどう思います?」
問われた内容は、思いもかけないものだった。
「ノア側だから方舟も操れたとしたら。…もしもの、話ですけど」
取って付けるように最後にもしもを付け足すアレンに、白い頭に触れていた手を離す。
思いもかけない内容だけど、すぐに納得もできた。
やっぱり気にしていたんだ、周りの空気。
やっぱり平気なフリして笑っていたんだ、アレンは。
そう思うと、クロス元帥の血痕に縋るティムを見た時のように、少し胸が痛んだような気がした。
そうだよね。
例え幼い頃からエクソシストとしての自覚があって、こんな世界で誰かを守る為に命を張っていたとしても。
アレンはまだ15、6歳くらいの男の子なんだから。
「…とりあえず、アレンの話を聞くかな」
少しだけ考えて、すぐに回答は出た。
「多分、アレン自らノアに加担してはいないだろうから。何かしら理由があるんだろうって思って、話を聞くよ」
「なんで…そう思えるんですか? 僕は神田みたいに、雪さんと長い付き合いじゃないのに…」
なんでそこで神田。
付き合い長くても、そう簡単に神田と信頼関係なんて結べないよアレン。
「そんなの関係ないよ。勿論アレンの人柄も理由の一つになるけど。でも普通に考えて、アレンが本当にノアの手先だったらそんなことはしないと思う」
「え?…なんで?」
驚いたように目を瞬くアレンに、つい笑みが漏れる。
そんなの、考えれば簡単なことだ。
「千年伯爵は巧みな言葉で人を誑(たぶら)かして、AKUMAを造らせるような道化師だよ。そんな親玉なら、もっと巧みにアレンを教団に紛れ込ませると思う」
指先で差した後、そっと軽くその左眼の上を走る星型のペンタクル痕に触れる。
ぴくりと僅かに体を揺らしたけど、アレンは逃げなかった。