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My important place【D.Gray-man】

第20章 もしもの話



 そんな…それは困る。
 そういえば私も退魔の剣の影響を受けた直後に、頭に聖痕の傷ができていた。

 …駄目だ。
 絶対とは言い切れなくても、そんな危険な選択肢、選べない。


「雪さん…?」


 押し黙ってしまった私を、怪訝な顔でアレンが覗き込む。


「…ううん。そっか」


 なんとか首を横に振って、顔を退きつつアレンに笑いかけた。

 これ以上、体を悪化させられない。
 完全にノアになってしまったら、もう後戻りできない。

 …どうしよう。
 やっぱり回避の方法なんて、ないのかな…。


「顔色、よくないですよ。大丈夫ですか?」


 そっと、手袋をしたアレンの手が顔に触れる。


「昨日も夜遅くまで任務でしたし。調べものもいいですが、睡眠も取らないと」

「…うん…」


 手袋の上からでも、じんわりと微かに感じる体温。
 ひんやりと心地良い冷たさの神田の手と違って、アレンの手は温かい。
 その人柄を表しているかのように。


「それ、アレンもだけどね」


 言えばきょとんと目が瞬いて、すぐに苦笑した。


「確かにそうですね」

「アレンは周りのことばかり気にするから。もっと自分も大切にしないと」

「そうですか? してますよ、ちゃんと」

「そうかなぁ…」


 私から見れば、自分より周りを気遣っているように見えるけど。


「方舟だって、大いに活用させてもらってる身で悪いけど。あれ、負担とかないの?」

「特には。イノセンスみたいに、発動してる感覚みたいなものはないですし」

「そうなんだ」


 元々は伯爵の使ってた移動用の乗り物だから、最初は利用するのにも不安はあった。
 けれど方舟ゲートの入口から、また次の入口へ向かう間の、方舟内の白い空間。
 それはまるで南国のような白い煉瓦の建物が並ぶ空間で、どこか落ち着く雰囲気だった。

 この暗く重たい、黒の教団とは正反対に。


「じゃあ自然と操るような感じ?」

「まぁ、歌を…」

「歌?」


 頬に触れていた手が離れる。
 視線を私から僅かに逸らして、思い出すように呟いたアレンははっと口を閉じた。
 あれ…もしかして話したくなかった内容かな。

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