My important place【D.Gray-man】
第21章 玉兎.
窓から差し込む光は、柔らかく優しい。
ぽかぽかと穏やかな陽の光は、私の足元を温かく照らしてくれている。
気を抜けば、ついうとうとと居眠りしたくなるような、そんな優しい太陽の光が差し込む午後。
「如何かな? 味の方は」
「はい」
目の前には綺麗にデコレーションされたチョコケーキ。
上に乗ったマカロンの欠片を一口、フォークで頂く。
口の中に広がる、決して甘過ぎない上品な味わい。
別にスイーツに詳しい訳じゃないけど、これは素人の私が食べてもわかる。
絶対にレベルの高い美味しいケーキなんだろうって。
ふかふかの高級な椅子に座って、美味しい紅茶と共に美味しいケーキを食す。
そんな贅沢な午後。
「とっても美味しいです」
でも、なんとか浮かべた私の笑顔は思いっきり引き攣っていた。
だって。
「そうですか。それはよかった」
目の前でにっこりと笑うこの人の"圧"が、半端なかったから。
「これは私の新作なのですよ」
「へ…へぇ~…凄いですね、長官自らケーキをお作りになるなんて…」
「しがない趣味の一つでね」
そう、長官。
方舟事件以来、教団本部に訪れて身を置いているこの人は、中央庁特別監査役の長官を務める人。
黒の教団の更に上層部の人。
マルコム=C=ルベリエ。
そしてあのお偉い教団幹部ルベリエ家の筆頭の方。
ただのファインダーである私からすれば、途方もなく偉い人。
間違っても、こうやって向かい合って一つの机で一緒にケーキなんて食べる仲じゃない。
というか寧ろ遠慮したい。
だってこの方、威圧が半端ない。
笑ってるけど目が笑ってない。
神田の威圧感満載な怒り顔とは、また別物で怖い。
「よかった。此処の者達は中々私のケーキを食べてくれなくてね。美味しいものは、やはり誰かと一緒に味わいたいものでしょう」
「そうです、ね」
それは長官、貴方が怖いからです。
そんな蛇のような威圧ある顔で誘われたら、何かしら理由付けて断りたくもなります。
かく言う私も、その手段を選ぼうとしたんだけど…選べなかった。
その理由は、ただ一つ。