My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「すみません、僕がもっと早くに駆け付けていれば」
「もう、だから大丈夫だって。アレンには充分、感謝してるよ」
しゅんとする姿に、元気付けるように笑いかける。
これは絶対にアレンの所為じゃないから。
まぁ確かに、あの退魔の剣でも胸に火傷みたいな跡はできてしまったけど──…退魔の剣?
「あ」
はっとする。
アレンの退魔の剣は、ノアやAKUMAだけに効果を発揮するイノセンスだ。
体がダークマターで出来ているAKUMAはダメージを受けるけど、体が人間のままのノアなら。
「ねぇアレンっ」
「は、はい?」
「聞きたいことがあるんだけど…っ」
アレンの退魔の剣を使えば、もしかしたらノアとして覚醒するのを止められるかもしれない。
そう思い立ったと同時に、縋るようにアレンの腕を掴んでいた。
イノセンスである、その左腕を。
「アレンの退魔の剣で、前にノアを倒したんだよね? 一人」
「あ、はい。方舟の時ですね」
其処に私はいなかったから、後で情報として聞いた話だ。
リナリーが伯爵に攫われてノアの方舟に連れ去られた時、それを追ったアレンは退魔の剣を初めて発動させて、ノアを一人倒したらしい。
その時退魔の剣が浄化したのは、ノアの体ではなく体内のノアメモリーだけだったとか。
それなら私の体にあるかもしれないノアの遺伝子も排除できるかも…!
「それを使えばノアを普通の人間に戻すことができるんだよね…っ?」
「そうですね…って雪さん近いっ」
感情に乗って思わず身を乗り出していた。
間近にあるアレンの顔が、僅かに赤くなる。
わぁ、相変わらず可愛いなぁ…じゃないっ。
アレンの言葉に希望が湧く。
もしかしたら教団に報告せずとも、アレンに協力してもらえばこっそりノア覚醒を回避できるかも…!
「で、でも完全とは言えませんよ」
「え?」
「ティキの時は、完全に倒すまでには至りませんでしたし…あ、ノアのことなんですけどね」
私の肩を緩く押し返しながら、赤い顔を逸らして言う。
アレンのその言葉に、思考が止まる。
「寧ろノアとして覚醒させてしまったみたいで、あの時は大変でした。師匠がいなければ僕達全員、ティキに倒されていたかもしれませんし」
「…ノアとして…覚醒?」
「はい」