My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
──────────
人の気配は一つもない、教団本部の深夜廊下。
更に光が届かない暗い廊下の先にある、クロス元帥の消息事件部屋。
そこでアレンと二人…じゃない、ゴーレムも一匹加えて、ゆっくりと時間を食(は)んでいた。
「アレンはさ。元帥が消えた原因ってなんだと思う?」
「さぁ。大方また教団が嫌になって逃げ出したんじゃないですか」
「私、割と真面目に聞いたんだけどな」
「僕も真面目に答えました」
まじですか。
思わず隣を見れば真剣に頷くアレンがいて、それ以上は何も言えなかった。
反論の余地はないです。
「じゃあアレンは元帥が死んだなんて──」
「あの人は殺したって死にません」
「…色々矛盾してない?」
「大丈夫。言葉通りの人ですから」
まじですか。
もうそれ神様の域じゃないのかな。
「クロス元帥のこと信頼してるんだね」
「信頼というより強制的に刻み込まれた師匠のキャラ像が、脳内で否定しまくっているというか…あの人、大人しく死ぬような性格じゃないし」
「へぇ…」
うん…色々と複雑な関係なんだね、アレンとクロス元帥って。
頭を抱えて首を頑(かたく)なに振るアレンに、思わず苦笑する。
視界の隅には、まだ血痕の上に座り込んでいるティムの姿。
そんなティムが落ち着くのを待ちつつ、私とアレンは備え付けのソファに座っていた。
立入禁止部屋だから、家具も触っちゃいけないんだろうけど…もう色々と今更だし。少しくらい許して下さい。
それにこうしてアレンとゆっくり話すなんて、最近は色々あってあんまりなかったから。こんな時間も悪くないと思う。
話の内容はアレだけど。
「そういえば、そこ。まだ跡が残っているんですか?」
不意にアレンの目が、私の額に向く。
大袈裟な包帯はもうしてないけど、そこには肌と同じ色の絆創膏を何枚も貼ってるから。もう前髪で隠せるような状態じゃなかった。
「うん。顔の怪我だから、綺麗に跡が消えるまでは…なんだか恥ずかしくって」
取り繕うように笑って言えば、アレンは心配そうな顔をしてくれた。