My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
「ごめん。急にド忘れしちゃった」
「やっぱり疲れてるんですよ」
「あはは、そうかも」
…駄目だ、やっぱり。
聞くのは、アレンであってもちょっと怖い。
「雪さんも明日はお休みですか?」
「うん。明日はゆっくり起きるようにしようかな」
「それがいいですね」
"もしも"
仮の話であっても、これは仮の話じゃないから。
アレンは優しいから、きっときちんと考えて答えてくれるだろう。
AKUMAにも慈悲を向けるアレンなら、ノアであっても受け入れてくれるかもしれない。
でももし万が一、アレンがノアの私を少しでも拒否したら。
そしたら私はもうきっと教団に言えなくなってしまう。
奮い立たせて保っているこの気持ちを、きっと挫かれてしまうから。
「にしても、お腹減ったなぁ…」
「え。さっきスナックバー食べたばかりなのに?」
それが怖い。
だから、簡単には聞けない。
「じゃあ食堂寄ってから、書庫室行く? まだ食堂もギリギリ開いてるだろうし」
「いいんですかっ」
「ふふ、うん。いいよ」
"もしも"
そんな言葉にさえ縋る勇気は、私にはまだなかった。