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My important place【D.Gray-man】

第20章 If.



「一緒に待っててくれたんだ。雪さんにお礼」


 アレンに言われて、ティムが私の頬にその長い尾を擦り寄せてくる。


「これくらい、いつでも付き合えるから。今度またここに来たくなったら、私の所においで」

「ガアッ」


 笑って言えば、ティムはギザギザの歯を見せて応えてくれた。


「駄目ですよ。そんなこと言うと、本当に雪さんの所に行っちゃいますから。ティムが迷惑かけます」

「それくらい平気だよ」

「でも…」

「ガァアッ」

「ティムもそんな我儘言うんじゃないっ」

「…前から思ってたけど、アレンってよくティムの言葉わかるよね…私、全然わかりません」

「慣れですよ、慣れ」


 そんな雑談をしながら、部屋を出る。
 此処に来た時は暗かったアレンのあの顔は、今は自然と消えていた。

 よかった。


「今からまた書庫室で、調べもの続けるんですか?」

「アレンは?」

「…僕はもう寝ようかと。リンクが起きたら困るし…なんだか雪さんと話したら、スッキリしたから」

「そう?」


 そう笑うアレンは、本当にどこかスッキリとした表情をしていた。


「雪さんも、そろそろ寝ませんか? ずっと調べてたみたいだし…資料片付けるの手伝いますから」

「うーん…そうだね。じゃあお言葉に甘えようかな…」


 問題は解決してないけど、これ以上アレンに心配掛けたくないし。
 私も誰かに見つかる前に、あの資料片付けようかな。
 それに今は、アレンのこの顔見たら…私も少し満足できたから。
 また後日、調べよう。


「…ねぇ、アレン」

「なんですか?」


 灯りを手に、隣を歩くアレンを見る。
 こっちを見てくるその表情は柔らかく、優しい。

 周りから疑心暗鬼の目を向けられていたアレンは、私とどこか似た境遇の身。
 …そんなアレンなら、私の立場もわかってくれるかな。


「…あのさ、もしもの話なんだけど」


 "もしも"

 その言葉を付けたら、私も聞けるかな。


「もしも──」










 私がノアだったら、アレンはどう思う?










「……」

「……雪さん?」

「………ううん」


 その先は、言葉にできなかった。

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