My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「よし。じゃあ書庫室に戻りま…ってティム! お前また…っ」
笑顔で腰を上げて、ドアに向かおうとしたアレンが声を上げる。
見ればいつの間にか、アレンの掌にあった金色の球体はまた、血痕の上にぽちょんと腰を落ち着けていた。
わあ…こんな調子じゃ中々目を離せないかも。
「ほら、もう帰るぞ。夜も遅いんだし」
再び手を差し出すアレンに、今度はふるふると球体を横に振る。
おお…ティムが反抗している。
そして反抗してても仕草が大変可愛いな。
「こら、ティム!」
「まぁまぁ。まだ此処にいたいんだよ、ティム」
思わずティムに絆されてしまって、アレンの肩を叩いて宥める。
「もう少し、好きにさせてあげたらどうかな。ティムも満足したら言うことを聞いてくれるだろうし。私も付き合うから」
「でも…」
「アレン、明日も非番でしょ? 調べものは明日もできるし。ね」
「それは…まぁ…」
渋々と頷くアレンに笑いかけてティムを見る。
私の視線を受けた可愛いゴーレムは、金色の尾をゆらりと一度だけ揺らした。
まるで声無き礼を、告げるかのように。