My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「あはは、まさか。いくら女性好きでも、私まだその時幼かったし。リナリーみたいな美少女ならまだしも」
私は生憎、そんな胸を張れる容姿なんてしていない。
教団の地下で出会った時なんか、血と包帯だらけで身形もボロボロだった。
そんな子供を、好意的に見る方が無理な話だと思う。
大体異性として見てたら、布団に引き込んだり一緒の部屋で寝泊まりなんてしない。
…と、思う。多分。
「そんな、僕は雪さんも充分──」
「充分?」
「…いえ、なんでもないです」
するといきなり声を上げたかと思えば、中途半端にアレンが止まる。
顔を逸らして言葉を濁す姿は、なんだか恥ずかしそうにしていた。
え、何言いかけたのそれ。
「と、とにかく。師匠は見た目で判断したりしませんよ。気に入ったら年齢だって関係ないです」
「そうなの?」
てっきり美女好きかと思ってたのに。教団内ではクラウド元帥にちょっかいかけてるところ、時々見てたし。
顔に大きな傷を持っているクラウド元帥だけど、それにも勝る美貌も備えている。
あとは…アニタさんとか。
ラビから教えてもらったけど、絶世の美女という名称が相応しい中国人女性で、元帥の…その…良い人だったんだとか。
流石、ヨーロッパ系からアジア系まで美女のご趣味が広い。
「師匠がそこまでしたのなら、きっと雪さん自身に惹かれたんでしょうね。人を見る目はありますから」
「私自身、ね…」
言われて考えてみる。
初めて出会った時、一方的に私は元帥を突き放してたしなぁ…元帥に慣れるまでも、生意気な態度は多かったと思うし。
大体あんなの、元帥には良い思い出にもならないと思う。
「やっぱりないかな」
うん、ないない。
私が元帥だったら、あんな生意気な子供なんて嫌だ。
「なんせ生意気な子供だったから。多分それはないかな」
神田みたいに外見も中身も魅力あるものを、私は持っていない。