My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
「まぁ、だから。アレンが本当にノア側だったら、そこに何か理由はあると思うから。一方的に敵視はしないよ」
一瞬考え込んでしまいそうになった思考を切り替えて、目の前のアレンに笑いかける。
「それははっきり断言できる」
…だって私がそうだから。
ノアだからって、それだけで敵視されたら…私は何も言えない。
結局アレンに良いことを言ってるようで、私は自分が可愛いだけ。
…本当駄目だな、私。
「やっぱり雪さんは、立派なファインダーですね」
「…そう?」
感心したように、アレンが息をつく。
「はい。そうやって冷静に周りを分析する力、凄いと思います」
「こんなの普通だよ。…それにそれだけじゃないからね」
自分が可愛い人間だけど…でもアレンに対して、はっきり思えることは確かにある。
「アレン・ウォーカーって人物がそれだけ、信頼するに足る存在だからだと思う」
「…僕が?」
忽ち丸くなるその目を見返して、頷く。
「アレンはいつも教団の人や一般市民や…AKUMAのことを考えて、戦ってるでしょ。それって、安易な善意の気持ちじゃできないから」
綺麗事を口にするだけなら簡単。
でもそれを常に行動に移すことは難しい。
『それでも僕は、誰かを救える破壊者になりたいです』
南イタリアのマテール。
アレンがエクソシストになって初めて任された任務地が、其処だった。
私も神田と共に、同じ任務でアレンと同行した。
其処でアレンが神田に向けた言葉。
エクソシストは"救済者"じゃなく"破壊者"だと口にした神田に、アレンは目に浮かぶ雫を拭いながら静かにそう言った。
どっちの意見が正しいなんて、そんなことは思わない。
アレンにはアレンの神田には神田の、それぞれの思いがあってエクソシストとして戦っているだろうから。
ただ、"誰か"なんてそんな曖昧な存在に涙を流せるアレンは、純粋だと思った。
「私じゃそんなふうにできないから。…だから、アレンは凄いと思う」
私はきっとそんなこと、口にできない。
だからこそアレンの凄さがわかる。