My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
聞きたいことってなんだろう。
こくりと頷いてみせると、アレンはもう一度だけ口を閉ざした。
迷うように視線を部屋に向けて、それからもう一度私をその目に映す。
「…もし僕が、周りが噂するような…本当にノアの手先だったりしたら、雪さんはどう思います?」
問われた言葉は、思いもかけないものだった。
「ノア側だから方舟も操れたとしたら。……もしも、の話ですけど」
取って付けるように最後の言葉を追加するアレンに、白い頭に触れていた手を離す。
…やっぱり気にしてたんだ、周りの空気。
やっぱり平気なフリして笑ってたんだ、アレンは。
そう思うと、クロス元帥の血痕に縋るティムを見た時のように…少し胸が痛んだ。
「……とりあえず、アレンの話を聞くかな」
少し考えて、すぐに出た結論はそれだった。
「話?」
「うん。多分、アレン自らノアに加担してはいないだろうから。何かしら理由があるんだろうって話を聞くよ」
「…なんでそう思うんですか? 僕は神田みたいに、雪さんと長い付き合いじゃないのに…」
なんでそこで神田。
付き合い長くても、そう簡単に神田と信頼関係なんて結べないよアレン。
「そんなの関係ないよ。勿論アレンの人柄も理由の一つになるけど。でも普通に考えて、アレンが本当にノアの手先だったらそんなことはしないと思う」
「え?…なんで?」
驚いたように目を瞬くアレンに、つい笑みが漏れる。
そんなの、考えれば簡単なことだ。
「千年伯爵は巧みな言葉で人を誑かして、AKUMAを造らせるような道化師だよ。そんな親玉なら、もっと巧みにアレンを教団に紛れ込ませると思う」
指先で、軽くその左眼の上を走る星型のペンタクル痕に触れる。
ピクリと僅かに体を揺らしたけど、アレンは逃げなかった。
「こんなAKUMAと同じ形の眼を持たせたり、方舟を操らせたりさせないでしょ。そんなの、疑って下さいって言ってるようなものだし」
初めてアレンが教団に来た時も、このペンタクルの所為でAKUMAだって門番に疑われて神田が攻撃したんだよね。
あの時の神田、微塵も迷いなかったなぁ…。
……。
…私のことも知ったら、神田は迷いなく攻撃したりするのかな。