My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
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「アレンはさ、元帥が消えた原因ってなんだと思う?」
「さぁ…大方また教団が嫌になって、逃げ出したんじゃないですか」
「…私、割と真面目に聞いたんだけどな」
「僕も真面目に答えました」
まじですか。
思わず隣を見れば、真剣に頷くアレンがいて何も言えなかった。
反論の余地はないです。
「じゃあアレンは、元帥が死んだなんて──」
「あの人は殺したって死にません」
「…色々矛盾してない?」
「大丈夫、言葉通りの人ですから」
まじですか。
もうそれ、神の域じゃないのかな。
「クロス元帥のこと、信頼してるんだね」
「信頼というより強制的に刻み込まれた師匠のキャラ像が、脳内で否定しまくっているというか…あの人、大人しく死ぬような性格じゃないし」
「へー…」
…うん。
色々と複雑な関係なんだね、アレンとクロス元帥って。
頭を抱えて首を頑なに振るアレンに、思わず苦笑する。
視界の隅には、まだ血痕の上に座り込んでいるティムの姿。
そんなティムが落ち着くのを待ちつつ、私とアレンは部屋の備え付けのソファに座っていた。
立入禁止部屋だから、家具も触っちゃいけないんだろうけど…もう色々と今更だし。少しくらい許して下さい。
それにこうしてアレンとゆっくり話すなんて最近は色々あってあんまりなかったから、こんな時間も悪くないと思う。
話の内容はちょっとアレだけど。
「そういえば、そこ。まだ跡残ってるんですか?」
不意にアレンの目が、私の額に向く。
大袈裟な包帯はもうしてないけど、そこには肌と同じ色の絆創膏を何枚も貼ってるから。
もう前髪で隠せるような状態じゃなかった。
「…うん。顔の怪我だから、綺麗に跡が消えるまでは…なんだか恥ずかしくって」
取り繕うように笑って言えば、アレンは心配そうな顔をしてくれた。
「すみません、僕がもっと早くに駆け付けていれば…」
「もう、だから大丈夫だって。アレンには充分、感謝してるよ」
しゅんとするその姿に、元気付けるように笑いかける。
これはアレンの所為じゃない。
まぁ確かに、あの"退魔の剣"でも胸に火傷みたいな跡はできてしまったけど──
「……」
…退魔の剣?
「あ。」