My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
『ごはん、おいしかったよ。あんなにおいしいごはん、たべたことないもん…ッ』
私を押さえ付けて叱る元帥を、必死に見上げてそう抵抗した。
ご飯があんなに柔らかくて美味しいものだったなんて知らなかったから、口にした時は素直に美味しいと思えた。
誰が持ってきてくれたって。
──でも怖い。
また得体の知れない薬が、中に入っていないか。
また得体の知れない実験を、させられるんじゃないか。
そんな不安が、体に何かを入れるのを拒否してしまう。
『ちゃんとしてるから…ッだいじょうぶだから…っ』
だから面倒なんて思わないで。
私が帰りたい場所は、何処にもないから。
見捨てないで。
此処にいたい。
もう今はいないけど。
亡き両親の一番近くに、いたいから。
『……ったく、』
必死に声を荒げる私を見下ろして、鋭い目は僅かに見開いた。
『できたガキなんてとんでもない。世話の焼ける小娘だ』
『な、ん…っ』
『騒ぐなよ。色々と面倒だからな』
自分の頭を掻いて盛大に溜息をついたかと思えば、着ていた大きなコートを脱いで私に被せてくる。
大柄な元帥用のコートじゃ、私の幼い体は頭から足先まですっぽり覆われて隠れてしまった。
それよりも急な元帥の行動に、意味がわからず固まってしまったけれど。
そのまま軽々と抱き上げられたかと思えば、驚き声を上げる間もなく部屋の外に連れ出された。
それでも見張りはあったのか、すぐさま知らない教団の人が止めに入ってきた。
『元帥、何を──』
『こいつは俺の元で暫く面倒を見る。別に問題はねぇだろ』
『し、しかし…ッ』
『なに、コムイ・リーの任命式が済むまでだ。それまで俺の仕事も全部、内勤で頼むわ』
『元帥でも流石にそのような身勝手は…ッ!』
『身勝手?』