My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
「そんな、僕は雪さんも充分──」
「充分?」
「…いえ、なんでもないです」
するといきなり声を上げたかと思えば、中途半端に止めるアレン。
顔を逸らして言葉を濁す姿は、恥ずかしそうにしていた。
なんだろう?
「と、とにかく。師匠は見た目で判断したりしませんよ。気に入ったら幾つだって関係ないんです」
「そうなの?」
てっきり美女好きかと思ってたのに。
教団内ではクラウド元帥にちょっかいかけてるとこ、時々見てたし。
アニタさんを含め、元帥の傍にいた女性は皆美人だったし。
というか幾つでも関係ないって。
流石としか言いようがない。
「師匠がそこまでしたのなら、きっと雪さん自身に惹かれたんでしょうね。人を見る目はありますから」
「私自身、ね…」
言われて考えてみる。
初めて出会った時、一方的に私は元帥を突き放してたしなぁ…。
元帥に慣れるまでも、生意気な態度は多かったと思うし。
大体あんなの、元帥には良い思い出にもならないと思う。
「やっぱりないかな」
うん、ないない。
私が元帥だったら、あんな生意気な子供なんて嫌だ。
「なんせ生意気な子供だったから。多分それはないかな」
神田みたいに外見も中身も魅力あるもの、私は持っていない。
「まぁそれは今も、大して変わらないんだけど…」
「そんなことない」
苦笑混じりに言えば、はっきりとしたアレンの言葉がそれを遮った。
「そんなことないです」
もう一度、念を押すように繰り返す。
その顔は真っ直ぐに私を見ていた。
「…僕にとっては、そうじゃない」
僅かな灯りで見える、銀灰色の目。
揺らぐ灯りの所為か、その瞳の中の光も揺らめいて見えた。
「…嬉しかったですよ。ロンドンで、雪さんがかけてくれた言葉」
…それって。
思い出したのはロンドンの任務地で一瞬だけ見せた、あの泣きそうなアレンの顔。
「さっきだってそうです。心配しながら、でも無理には聞こうとしなかったでしょ。それは雪さんが持つ優しさだと思う」
「……そんなことないよ」
それは私が直接聞けない、臆病者なだけ。
優しさなんて綺麗なものじゃない。