My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
怖い顔のままズカズカと近付いたかと思えば、思いっきり無遠慮に服を捲られて、あの時は流石に吃驚して抵抗したっけ。
『ぎゃー! な、なにすんの…!!』
『何だと? それは俺の台詞だ馬鹿が! なんだこの体、ちゃんと食えって言っただろ!』
『っ…たべたよ、ちゃんと! いわれたとおりにした!』
与えられるものにケチなんて付けてない。
ちゃんと言われた通りに全部食べた。
……ただその後、吐いたけど。
とは、流石に言わなかったけど。
私を押さえ付けて叱る元帥を、必死に見上げて。
『ごはん、おいしかったよ。あんなおいしいごはん、たべたことないもん…ッ』
ご飯があんなに柔らかくて美味しいものだったなんて知らなかったから、口にした時は素直に美味しいと思えた。
誰が持ってきてくれたって。
──でも怖い。
また得体の知れない薬が、中に入っていないか。
また得体の知れない実験を、させられるんじゃないか。
そんな不安が、体に何かを入れるのを拒否する。
『ちゃんとしてるから…ッだいじょうぶだから…っ』
だから面倒なんて思わないで。
私が帰りたい場所は、何処にもないから。
見捨てないで。
此処にいたい。
もう今はいないけど。
亡き両親の一番近くに、いたいから。
『……ったく、』
必死に声を荒げる私を見下ろして、鋭い目は僅かに見開いた。
『できたガキなんてとんでもない。世話の焼ける小娘だ』
ガリガリと自分の頭を掻いて盛大に溜息をついたかと思えば、着ていた大きなコートを脱いで私に被せてきた。
大柄な元帥用のコートじゃ、私の幼い体は頭から足先まですっぽり覆われて隠れる程。
『騒ぐなよ、色々と面倒だからな』
『っ!?』
そのまま軽々と抱き上げられたかと思えば、驚き声を上げる間もなく部屋の外に連れ出された。