My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「リンクさんは?」
「リンクは就寝中です。夜中に出歩くとうるさいから、黙って来ちゃいました」
成程。
確かに24時間傍で監視され続けたら、少しは息抜きしたくもなるよね。
「そっか。じゃあゆっくり資料探せるね」
「はい、まぁ」
笑って言えば、アレンからはまた苦い笑みだけ返された。
そのぎこちなさに疑問を覚えれば、銀灰色の目は迷うように宙を見上げた後、机に置かれていた資料に目を向けた。
私が集めた、ノアの文献だ。
「というか、此処にあるんですけどね」
「え?」
それって…。
「もしかして調べものって、ノアに関すること?」
「…はい」
恐る恐る聞けば、控えめにアレンは頷いた。
まさかアレンの調べたかったことが、私と一緒だったなんて。驚いたけれど、すぐに思い直した。
エクソシストの宿敵はノアだ。
戦う相手を知ろうとするのは、自然なことなんだろう。
「あ。じゃあごめんね、私が資料全部持ってきちゃってたから」
「いえ。逆に手間が省けて助かりました。…僕も見ていいですか?」
「うん、どうぞ。こっちならもう目を通した後だから」
「ありがとうございます」
控えめに資料の山を指差すアレンに、隣の椅子を引いてどうぞと促す。
お互いに並んで、ノアの資料を漁ることにした。
小さな灯りに照らされた資料に目を落とすアレンの横顔は、真剣味がある。
〝ノアの一族〟
その存在は13使徒いるらしく、第1使徒こそがあの"千年伯爵"だという。
第2使徒「裁」
第3使徒「快楽」
第4使徒「欲」
第5使徒「智」
第6使徒「蝕」
第7使徒「恤」
第8使徒「怒」
第9使徒「夢」
第10・11使徒「絆」
第12使徒「色」
第13使徒「能」
資料を読み漁って知り得たのは、13使徒のノアメモリーの名前。
それと七千年前の大洪水。
七千年前の聖戦で一度は倒れた、千年伯爵。
その時の大洪水で拡散したノアの遺伝子は、この地球上の全ての人間の遺伝子に組み込まれた。
だからこそ地球上の全ての人間はノアの子孫であり、ノアに成り得る可能性を持っている。
ただノアに成り得る理由はわかったけど、それを止める術はどこにも記されていなかった。