My important place【D.Gray-man】
第20章 もしもの話
「はぁ…」
深々と溜息をつく。
机の周りには、積み上げられた文献や資料の数々。
視界を遮り周りを囲う程、沢山の資料の真ん中で私は項垂れていた。
「全然わかんない…」
思いっきり頭を抱えて。
「大体全部、同じような情報ばかりだし…知りたいことは何一つ記されてないし…」
机に突っ伏したまま顔を横に向けて、傍にあった資料をペラペラと捲(めく)る。
此処は黒の教団の書庫室。
時間帯は、必要な人員以外は寝静まった夜中。
再びこっそりお邪魔しているけれど、観覧に制限がかかったものだけを求めに来た訳じゃない。
今必要としているのは、ノアの情報。
「これじゃ回避のしようがない…」
だけどそれは神田の第二使途よりも難解な道だった。
思わず零れた泣き言に、ぐっと歯を食い縛る。
駄目だ、簡単に諦めたら。
まだ私は"覚醒"していないんだから。
不安はまだある。
恐怖だって残ってる。
ノアの遺伝子は地球上の全ての人類が持っているもの。
その中で特定の人だけがノアメモリーを"覚醒"することで、超人のような能力を持つことができる。
額の出血は止まったけど、しっかりと刻まれているのはまさしくノアの聖痕と同じもの。
やがて私も覚醒すると、ノアとなってしまうんだろう。
でも逆に考えればそれはまだ、回避できる余地があるということだ。
そんな僅かな希望に懸けて、どうにか止められる方法はないか。
ノアに関する記述が少しでも載っている資料を全て、片っ端から読み漁っていた。
「大丈夫。大丈夫」
言い聞かせながら顔を上げる。
ぱんっと両頬を叩いて自分に喝を入れた。
「ちゃんと見てくれる人もいるんだから」
一度落ちた私の気持ちを、奮い立たせてくれたのは神田だ。