My important place【D.Gray-man】
第20章 If.
でも教団幹部や教皇は、中央庁同様に手厳しい相手。
私にノアの可能性があることを知ったら、有無言わさず拘束するだろう。
だからこそ少しでも打破できる案が見つかってから、このことを伝えようと思った。
じゃなきゃ最悪、私は満足な発言も許されないまま死刑台行きだ。
「…はぁ」
そんな最悪な想像をしてしまって、また凹む。
「……なんで私なんだろ…」
零れた言葉はここ毎日、自問自答しているものだった。
一体誰がノアとして覚醒するのか、理由なんてきっとないんだろうけど。
星の数程いる人間の中、なんだって教団で働いてる私が選ばれたのか。
もしも神様なんて存在がいるのなら、残酷な性格だと思う。
「…なんて、」
神様なんて、信じちゃいないんだけど。
「こんなこと上層部の方々が聞いたら怒るかな…」
エクソシストを"神の使徒"なんて呼んでるくらいだから。
でも私は、そういうものに縋るのはとうの昔にやめた。
"かみさま、かみさま。おねがいです"
昔はよく小さなベッドの中でお祈りしたっけ。
でも。
どんなに願っても、お腹は膨れなかったし。どんなに願っても、両親は迎えに来てくれなかった。
だから自分で森や林を漁って、空腹を満たしたし。だから自分で両親に会いに、教団に一人赴いた。
何かに縋る暇があるなら自分でなんとかする。そうしなきゃ今の私は此処にいない。
そうしていつの間にか、私は神様に祈るのはやめた。
それに都合の良い時だけ"お願いです"なんて頼るこんな人間、神様だって願いを聞き入れたくはないだろうし。
「…よし。もうひと踏ん張り」
ふぅと息を吐いて、頭を切り替える。
まだ見ていない文献に手を伸ばして、ざっと目を通し始める。
嘆く暇があるなら足掻いてみないと。
後悔したって後の祭り──
ぐきゅるる~
「……」
勢いを削ぐような間抜けな音が響いて、思わずガクリと肩を落とした。
タイミング悪っ