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My important place【D.Gray-man】

第20章 If.



「はぁ…」


 深々と溜息をつく。
 項垂れる私の周りには、積み上げられた文献や資料の数々。
 周りを囲う程、沢山の資料の真ん中で私は一人。


「………全然わかんない」


 頭を抱えていた。


「大体全部、同じような情報ばかりだし…知りたいことは何一つ記されてないし…」


 机に突っ伏したまま顔を横に向けて、傍にあった資料をペラペラと捲る。

 此処は黒の教団の書庫室。
 再び真夜中にこっそりと、私はこの場にお邪魔していた。

 理由はただ一つ。
 ノアのことを知るため。


「これじゃあ、回避のしようがない…」


 ぽつりと思わず零れた泣き言に、ぐっと歯を食い縛る。

 駄目だ、簡単に諦めちゃ。
 まだ私は"覚醒"していないんだから。


「……」


 不安はまだある。
 恐怖だって残ってる。

 ノアの遺伝子は地球上の全ての人類が持っているもの。
 その中で特定の人だけがノアメモリーを"覚醒"して、超人のような能力を持つことができる。

 額の出血は止まったけど、しっかりと刻まれたそれはまさしく聖痕と同じもの。
 やがて私も"覚醒"すると、その"ノア"と同じになってしまうんだろう。

 でも逆を言えばそれはまだ、回避できる余地があるということ。

 そんな僅かな希望に懸けて、どうにか止められる方法はないか。
 ノアに関する記述が少しでも載っている資料を全て、片っ端から読み漁っていた。


「大丈夫、大丈夫」


 言い聞かせながら顔を上げる。
 ぱんっと両頬を叩いて、自分に喝を入れる。


「ちゃんと見てくれる人もいるんだから」


 一度落ちた私の気持ちを、奮い立たせてくれたのは神田の言葉だった。

 果たしてこの事実を話して尚、私を受け入れてくれるのか。それはわからなかったけど…それでも。
 真っ直ぐに私を見て、意味があるならと言ってくれた。

 それだけで充分だった。
 不安定に揺れ動いていた心が、その言葉で少しだけ治まった。

 簡単には吐き出せないけど…もしこのことを教団に知らせようと思える時がきたら。
 その時は、


「…ちゃんと伝えよう」


 自分の口で誰より一番に、神田に伝えたい。
 そう思えた。

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