My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火
「じゃあ私は、アレンにコートを返しに行くから」
「待て」
司令室を出た途端、当然のような空気で去ろうとする月城を止める。
「消毒つったろ」
「…コート返しに行かないと」
「ンなもんいつでも返せんだろ。無視すんな」
それでも去ろうとする月城の腕を掴む。
聞こえてねぇフリすんなコラ。
「ほ、本気だったのそれ…! だから大丈夫だってっ」
「お前の大丈夫は信用ならねぇんだよ」
腕を掴んだまま歩き出せば、本気で抵抗してくるそいつに表情が硬くなる。
そんなに嫌なのかよ。
「本当に今回は大丈夫だからッ頭にあんな大量の消毒液かけられたら余計痛むだけだから…!」
「手加減してやるよ、多少は」
「多少!?」
抵抗し続ける月城の体を、ずるずると引き摺りながら廊下を進む。
あまりに騒ぐから廊下を歩く他の団員達の視線をちらほらと受けて、居心地悪そうに月城は声を抑えた。
「神田のその言葉の方が、信用できないんだけど…」
んだとコラ。
「そんなに痛くされてぇのか」
「っ! 嘘ですごめんなさいッ」
振り返って見えた月城の顔は、俺を見て一気に青褪めた。
んな顔したって止めねぇからな。