My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火.
「別に。いつまでもそんなツラ下げてりゃ、うざったいがな」
「う。」
はっきり言えば、目に見えて月城が凹む。
「だからって否定はしない。…言っただろ。そこに意味があるなら、ちゃんと見てやるって」
なんでもかんでも受け入れる程、生易しい心なんて持っちゃいないが、こいつのことならちゃんと見ていたいと思う。
「忘れんな」
はっきりと言えば、月城の目が丸くなる。
「…そっか」
指先で頬を掻きながら、へらりと砕けて笑う顔。
「ありがとう。…なんか本当に、それだけで胸がいっぱいになった」
うん、と納得するように頷いたかと思えば、ベッドから降りて真っ直ぐに俺を見上げてくる。
「神田って凄いね」
大したことなんて言ってない。
口にしたのは俺の本心なだけで、それにこれは…月城だからだ。
「周りが神田に惹かれる理由、わかった気がする」
「周り?」
「うん、ファンクラ…ごほごほ」
「なんだそのわざとらしい咳は」
「いえ」
月城の言う"周り"が誰かは知らないが、他の奴ならこんな面倒な相手はしない。
そういうこと、こいつはわかってんのか。
「神田ってモテるよねって話」
「は?」
「その美形の虜になるのはわかるけど、それだけであの暴りょ…ごほんっ。とにかく、外見だけじゃないってこと」
…多分わかってねぇな、こいつ。
「外見だけじゃなく神田のその中身も、周りを魅了してるんだろうなぁって。私、気付かなかったよ」
頬を緩めた笑みを浮かべて、しみじみと褒め称える。
普段なら鳥肌しか感じない賞賛も、こいつの口からなら違って聞こえた。
「…なら、気付いとけよ」
他の奴の言葉なんか要らない。
こいつがそう思えてるなら、それでいい。
「うん」
嗚呼、そうか。
頷く月城を前にして気付く。
こいつからの言葉なら、俺はどうやら素直に"嬉しい"と感じられるらしい。
何がきっかけなんて、わからない。
でも知らないうちに、どうやら俺の中でこいつの存在は大きくなっていたようだった。
それは、アルマのように。