My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火
「やぁ、おかえり。任務お疲れ様」
前教団本部では、常に書類が床に散乱していた司令室。
移動してからは、それなりに小奇麗になった場所でコムイに迎えられた。
恐らく傍らに就くようになった、あの室長補佐官の影響だろう。
「一日で任務達成なんて流石だね」
「情報がしっかりしていたので。下調べしてくれたファインダー達のおかげです」
「うん、そっか。そうだね」
はっきりと言い切る月城にコムイの表情が和らぐ。
そんなやり取りを幾つか交わして、いざ今回の任務報告にかかった。
──が。
月城は報告の為に口を開いたものの、何も言わず何故かこっちを見てきた。
…なんだよ。
「…神田?」
「なんだ」
「いや…」
物珍しそうに見ながら首を横に振る。その不思議そうな視線は月城からだけじゃなく、何故かコムイからも感じた。
だから、なんだよ。
「後は報告だけだから、先に休んでも大丈夫だよ…?」
「というかいつも報告時は神田くんいないよね」
…そういう意味か。
確かに今まで月城との任務の時は、事後報告は全て任せてきた。
先に司令室を後にして、こいつと一緒にこの部屋を出た試しはない。
………別にいいだろ、偶には。
「問題ねぇだろ、俺がいても。いいからさっさと報告しろ」
「まぁ…うん」
じゃあ、と口にして月城の目が再度コムイに向く。
「ふーん。珍しいねぇ」
だがコムイの目は未だ俺に向いたままで、ニヤニヤと楽しげに笑っていた。
…なんだその目は、気持ち悪ィな。
「任務地の墓地で確認したAKUMAの数は、七体。全て神田とアレンによって破壊達成しました。レベルは──」
月城の横で報告を耳にしながら、コムイから視線を逸らす。
幾つ分か低い隣の頭を見れば、嫌でも真新しい包帯が目につく。
どう見たって応急処置だけの包帯だ。額なんざ目立つところに怪我しやがって。
報告の後は手当てをし直さねぇと。